反英国映画について
先日見た1943年の松竹の『秘話ノルマントン号事件』は、明治時代のことだが、イギリスの悪を暴く反イギリス映画だった。 同様に、1943年の東宝には長谷川一夫主演の『進め独立旗』という作品もある。これは非常に奇妙な作品だが、長谷川がインドの藩国の王子で日本に亡命していて、英国領事館に追われるが、それを日本人が助けるという反英国映画である。...
View Article『海を渡る波止場の風』
1960年、公開された小林旭の主演作品。脚本は山崎厳と大川久男、監督は山崎徳次郎。この人は早撮りだったそうだが、「事件記者」シリーズなど、当時の2本立ての併映作品を多作した。 中には、赤木圭一郎、芦川いずみ、吉永小百合の『霧笛が俺を呼んでいる』などの傑作もあった。...
View Article『甘い汗』の長屋はどこだろうか
昨日は、小島豊美さんと両角康彦さんが主催する「よろず長屋 まったりトーク」で、神保町のきっさこで、松竹映画について再評価するトークをした。 私が、高校、大学の頃、一番好きだったのは日活で、東宝、東映、大映はよく見ていたが、松竹は一番バカにしていた会社だった。 だが、映画史を知るようになると松竹は、1920年の松竹キネマ創立時には、非常に新しい考え方を持っていた会社だった。...
View Article『摩天楼の男』
1960年に公開された日活作品、監督野村孝、主演は二谷英明、清水まゆみ。 地方のダム建設現場で事故が起き、現場責任者が死に、後任で二谷がSLに乗ってやってくる。 鳴海三四郎という名で、原作は城戸礼なので、姿三四郎的なキャラクターなのだと思う。...
View Article小津安二郎が結婚しなかった理由は・・・
先週の土曜日に行われた全国小津安二郎ネットワーク総会で、佐藤忠男先生の講演が行われた。 中で、佐藤先生のご記憶として、「芸術院会員になったパーティの時、小津さんの母親が出て来て、その前では、小津監督も小さくなっていた」 また、「言い方は悪いが、長男の方は、はっきり言って俗物的でした。小津の記念館を作る話が出ると、即座に小津家はいくら出さなければいけないんですか、と言うような人でしたね」...
View Article「内田監督、内田監督」と言うと
日大のアメリカン・フットボールの悪質タックル事件で、「内田監督、内田監督・・・」というと、「内田吐夢監督か」と思ってしまう。 内田吐夢は、戦前から巨匠と言われてきた監督で、戦後に中国から帰国してからも大巨匠として評価されてきた。 一般的には中村錦之助主演の『宮本武蔵』が有名だが、『飢餓海峡』は本当に凄い作品だと思う。...
View Article『ヒアアフター』
クリントイーストウッドの監督作品。 冒頭、南方の島、多分インドネシアだろう、にいたフランス人ジャーナリストのマリーは、津波に飲み込まれ、そこでの臨死体験から霊能力を得る。ロンドンの生活保護家庭の双子の弟マーカスは、買物に出て不良に絡まれて逃げ道路に飛び出して車に撥ねられて死んだ兄を思い出そうとしている。母親は麻薬中毒患者で、ケースワーカーの手によって施設に入れられ、弟は里親家庭に引き取られる。...
View Article高齢者になっても
先日、女優の朝丘雪路が亡くなったことが結構大きく報じられた。 数年間から認知症だったそうだが、その理由は彼女が生まれついてのお嬢様で、家事等を一切やらない女だったことがあるようだ。 自分で家事をしたのは、宝塚歌劇団にいた時のみだったというから凄いが、その代わり彼女は芸事に精出してきたわけだ。...
View Article木村元だった
BSフジで、1990年の『斜陽の果て』を見た。 これは、映画監督の石橋蓮司をめぐり、かつての恋人で女優の小川真由美と、現在の若い恋人の美保純が新作映画で共演する。 最後、青森の最果ての駅のシーンで、美保純がホームから転落し進行してきた列車にはねられて死ぬ。 事故か殺人かの取り調べになるが、最後フィルムに小川真由美が美穂純を押した瞬間が写っていて小川の殺人が確定する。...
View Article補習科があった
昨日は、都立小山台高校の3年の時のクラス会があり、武蔵小山まで行く。 会場は小山台会館で、これはもともと学校内に同窓生が寄付したというプーㇽの用地があった。 そこを約20年前、校舎全体を建て替えた時に、東京都所有以外の財産があるのはまずいとのことで、売却し、その金で武蔵小山に同窓生会館を作ったのだ。...
View Article『リオの情熱』
シネマヴェーラで見た1955年の『リオの情熱』は、日本航空がブラジルへの空路を開いたことを記念した新東宝映画だと思う。 実際に、主演の安西卿子、木暮三千代、藤田進、大木実は、ブラジルに行ってリオで撮影しており、新東宝としては大作だったろう。...
View Article鬼ではなく、猿だ
5歳の女児が虐待死し、両親はまるで鬼だとされているが、私は「猿」だと思う。 そして、こういう事件が起きるのは、戦後教育が悪い、日教組の性だと来る。 だが、明治、大正時代から劇団新派の当たり狂言は、継子虐めだった。松竹映画でも継子虐めはヒット作品だったと言われている。...
View Article昭南島の小津安二郎
話題の米朝のシンガポール会談だが、予測通り中身には乏しかったようだが、関係ができたことは良いことだと思う。 さて、太平洋戦争中に日本はシンガポールを占領し、昭南島と改称した。 戦時中に、ここに小津安二郎が来ている。...
View Article陸上も海も同じだった 『小倉昌男 祈りと経営』
森健の『小倉昌男 祈りと経営』を読んだ。ヤマト運輸の社長小倉昌男の経営と家族についてで、非常によく書かれている。 彼の家族がいろいろと問題があり、そこは他の本には書かれていないそうで、よく調べてあり、ノンフィクション大賞になったのもよくわかる。 だが、私が一番感じたのは、小倉のヤマト運輸が、1960年代以降に陸上運送事業について行った国(運輸省)との争いのことである。...
View Article高槻と言えば 『お吟様』
大阪北部地震で、学校の塀が倒れて死者が出て、高槻、高槻と報じられているが、戦国時代は、高山右近の地で、右近と言えば『お吟様』である。 今東光の小説は2回映画化されていて、1978年の熊井啓監督の方が評価が高かったようだが、私は1962年の田中絹代監督作品の方を評価している。...
View Article社宅からマンションへ
横浜でも、新築のマンションの建設が盛んで、その多くが元社宅である。 私は、某区で福祉課長をしている時、児童手当の受給者に大企業の職員の家族が多いのに気付いたことがある。 当時の受給制限の金額を憶えていないが、新日鉄、東芝、石川島等の企業の職員の給与が意外に低いのに驚いた。 だが、その分、社宅を低廉な料金で配備し、職員の福利厚生にしていたのだ。...
View Article『私説・内田吐夢伝』 鈴木尚之(岩波現代文庫)
私説と言っているが、他にはないので公的伝記と言って間違いない。 そして非常に面白いのは、内田吐夢という人が、矛盾を抱えた興味深い監督だったからである。 彼は、サイレント時代にすでに巨匠だったが、この時期で残っているのは少なく、私が見たのは『人生劇場』のほんの一部と『警察官』ぐらいである。 戦前で第一の作品は、意外にも小津安二郎原作の『限りなき前進』だろうが、これも完全版はない。...
View Article常田富士男死去、81歳。
俳優の常田富士男が亡くなられたそうだ、81歳。劇団民芸の若手等で作られた劇団青年芸術劇場にいて、ここが潰れた後は、フリーで活躍した。 福田善之が中心だった青芸は、大変に人気のあった劇団で、常田や米倉斉加年の他、唐十郎もいて、後に「失神女優」となる王蘭芳もここにいた。佐藤信も研究生でいたはずである。...
View Article『要心無用』
喜劇王の一人ハロルド・ロイドの1924年の喜劇。日本では日活で配給されたとのこと。 私も、キートン、チャップリンは見たことがあるが、演奏付きできちんと見たのは初めて。ピアノ演奏は柳下美恵さん。 筋は、田舎町から都会に出て来て、デパートの洋品売場の担当になったハロルドの奮闘を伝えるもの。...
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