1960年に公開された日活作品、監督野村孝、主演は二谷英明、清水まゆみ。
地方のダム建設現場で事故が起き、現場責任者が死に、後任で二谷がSLに乗ってやってくる。
鳴海三四郎という名で、原作は城戸礼なので、姿三四郎的なキャラクターなのだと思う。
そこは、二谷らの三浦建設と、荒川組(草薙幸二郎)が対立していて、二谷の部下は丹波哲郎、さらに、不満分子の神戸瓢助、柳瀬志郎らもいて不穏な状態。
東京から、グラフ雑誌社長の娘でカメラマンの清水まゆみが、少年と偽ってダムの建設現場に来る。男とするには無理があるが、映画なので良い。当時はダムに女は来てはいけないからだ。現場にいる女は、飯場の飯炊きだけである。
清水まゆみは結構可愛かったが、この頃出てきた後輩の吉永小百合に抜かれていく。『疾風小僧』がそうで、初めは清水まゆみに決まっていた役を監督の西河克己が吉永小百合に会って
「非常に小さいけど、この娘がいい」としたために清水は脇に回されたのだそうだ。そのために吉永は、スタッフに冷たくされたと書いている。
二谷と、悪の側のユスフ・トルコとのアクションシーンも凄い。ユスフは本物のレスラーだったので迫力があるが、二谷は、石原裕次郎の『俺は待ってるぜ』のラストシーンでも凄いアクションシーンを見せている。
建設は進みもう一歩というときに、小屋で火事が起き、それは荒川組に買収された者の放火だったが、二谷は、
「そんなことはどうでもよい、働いてダムを作ることが重要なのだ」と労働を賛美する。
脚本は熊井啓で、こうした労働賛美は、彼が支持する共産党のイデオロギーでもある。また、考えると後に熊井啓が脚本・監督する『黒部の太陽』にも続く「ダムもの」だったともいえる。
題名の「摩天楼」だが、摩天楼とは高層普通ビルのことで、ダムサイトを摩天楼というのは少々無理があるが。
衛星劇場