先日見た1943年の松竹の『秘話ノルマントン号事件』は、明治時代のことだが、イギリスの悪を暴く反イギリス映画だった。
同様に、1943年の東宝には長谷川一夫主演の『進め独立旗』という作品もある。これは非常に奇妙な作品だが、長谷川がインドの藩国の王子で日本に亡命していて、英国領事館に追われるが、それを日本人が助けるという反英国映画である。
また、阪東妻三郎が高杉晋作を演じる『狼煙は上海に上がる』は、中国に渡った高杉が、アヘン戦争とイギリスの悪を目撃する作品である。
さらに、マキノ雅弘監督には、そのものずばり『阿片戦争』もあり、このように反英国の映画は、戦前、戦中に多く作られている。
そして、意外なことに当時、反米映画というのは、実はあまり作られていないのである。
これはどうしてなのか、大東亜共栄圏には、中国、マレイ、インドなど、イギリスが進出していた地域で、日本との摩擦があったためなのだろうか。あるいは、イギリス帝国の大きさを日本は当時は非常に恐れていたということなのだろうか。