おそらく世界中のアイドル映画の中で、もっとも変わった映画だと思う。
近藤真彦と中森明菜のアイドル映画なのだが、その中身は臨死体験なのだ。
それは、映画製作を任された舛田利雄が、脚本の笠原和夫にいくつかの臨死体験があることから、そこを核にしてドラマを作ったのだ。
中森は、心臓疾患で、治療不能で、勝野洋の病院に入院してくる。両親はいなくて役所に面倒を見られているとのことで、生活保護だろう。
一方、近藤はカー好きのメカニック少年で、友人と改造車を走らせているとき、貨物トラック運転手らと争いになり、友人はトラックの下敷きで死んでしまうが、近藤は奇跡的に生き残る。
明菜は、小泉八雲の「耳なし抱一」が大好きで、同じ病室の認知症の老女北林谷栄に聞かせたりしているが、ついには抱一の霊が出て来て、明菜と対話するようになる。
この辺は、双方とも臨死体験的特撮映像が展開される。
子供に臨死体験と言うと奇妙に思えるが、私も小学校6年くらいの時は、死への恐怖に苛まれていたことがあり、子供イコール健康と言うのは誤解であり、むしろ死に近い存在でもある。
明菜は、一日で良いから死ぬ前に楽しい時間を過ごしたいと病院を出て、町の賑わいを抱一と体験する。
原宿のタケノコ族が出てくるのが時代である。
そこで、新宿の小田急デパートの屋上に立っている近藤を見つけて、飛び降りを阻止するために明菜は、屋上に上がり、近藤と会い、二人は、事故で運ばれたときに、同じ病院で会って一目ぼれしていたことを思い出す。
そして、幸福な時を過ごすが、当然にも二人はオートバイで海岸に行く。
だが、そこで明菜に発作が起きてしまい倒れる。そのとき、バイクのガソリンが切れていたので、スタンドにガソリンを求めて行っている内に、倒れている明菜は、親切な老人の車で病院に運ばれてしまい、ついに死んでしまう。
近藤は、病室に来て、死んだ明菜の死体を抱いて持ち出し、病院の研究室の運んで蘇生作業をする。
口移し呼吸などをするが、アイドル映画なので、ここでも性交はない。
そのとき、大地震が起き、研究室は潰れてしまうが、その廃墟から二人は救われ、なんと明菜は生き返っている。地震の振動で心臓が蘇生した奇跡なのだそうだ。
最後、明菜は海辺の福祉施設で働き、自動車の整備士の免許を取った近藤が島にやってくる。
そこは、徳之島で、住民がお盆の踊りのなかで、明菜と近藤も幸福に踊る。
なぜ、南島なのかは不明だが、この辺は海軍経験のある笠原の思いなのだろうか。
なんでもきちんとした映画にする舛田利雄はやはりすごい。