Quantcast
Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

『巨匠』

$
0
0

これは、NHKで放送されたポーランドのテレビ劇に感動した木下順二が作・演出したもので、主人公の老人は、滝澤修や大滝秀治が演じて来たそうだ。

                 

1967年で放送去れた時は、私も見て感銘を受けたもので、これ一つでもNHKの存在意義はあり、なんとからばかものたちが言う、「NHKをぶっ飛ばせ」には賛成できない。

彼らは、NHkを上回るような優れた番組を上げられるのだろうか。

民放吉本などに、そんな番組があるのか、お聞きしたいと思う。

話は、劇場の控室で、『マクベス』の上演を控えている役者と演出家の対話から始まる。

演出家が、経緯を説明するのは、1967年に放送されたこと、さらに1944年ナチスドイツ占領時代に、役者がまだ若い時、対ドイツパルチザン活動をしていたときのこと。

逃亡して、ある小学校に逃げ込むと、5人の男女がいる。

そこに、ドイツ兵が殺されたとのことで、ゲシュタポが来て、

「4人の知識人を、この中から殺す」と宣言し、各自を尋問する。

老人は、身分証明書に、帳簿付けとあったので、ゲシュタポの指令は、「帳簿付けだから無罪」と宣告する。

ところが老人は、「今は劇ができないので、帳簿付けだが、本当は役者だ」という。

すると「役者なら台詞を暗記して演じろ」と命令する。

老人は、『マクベス』を見事に演じる。

すると「お前は、立派な役者で知識人だ」とし、射殺されてしまう。

この劇で重要なのは、この『マクベス』を演じるところで、西川明は、悪くはないが、それ以上ではなかった。

この劇が製作されたのは、ポーランドはまだ共産党の抑圧下にあったはずだが、それは今は変わったのだろうと思う。

それに、私は、政治や権力に芸術家が戦うという物語が嫌いなのだ。

日本でも豊田四郎監督で、仲代達矢の王と絵師の萬屋錦之助が対立する『地獄変』があり、内藤洋子が出たので見たが、あまり感心できなかった。

この権力と芸術家との対立というのは、大正文学、新歌舞伎的発想だと思うのだ。

紀伊国屋サザンシアター

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

Trending Articles