土曜日は、図書室で読みたいものがあったので、フィルムセンターに頑張って清水宏監督作品を2本見る。
『人情馬鹿』と『母を求める子ら』で、どちらも大映だが、室内撮影が非常に暗い。カメラマンは、息子がNHKのディレクター高橋康夫になった高橋通夫。
原作は川口松太郎で、話は、キャバレーの女角利枝子の客で外車セールスマン菅原謙二が、客から金をもらってオートバイを渡さず使い込んでしまう。
詐欺罪で逮捕されるが、菅原の母滝花久子を哀れに思い、検事根上淳から示唆された方法、売買契約書を貸付契約に書き換えてもらうことに奔走する。
その書き換えに、菅原のお客に1軒づつ周り、最後は全部貸付にして、菅原を釈放させる。
店に来た菅原は、角利枝子に求愛するが、角はそんな気などなかったと言う。
無償の行為だが、むしろ川口作品によく出てくる江戸っ子の心意気と見るべきだろう。
『母を求める子ら』は、祭りの日に神隠しのようにいなくなった子を探していた三益愛子は、長野の施設で働くことになり、不幸な子供たちに会う。
「3倍泣けます」で有名な三益愛子の「母もの」が終わった後の作品だが、母ものの変種というべきだろう。
最後、三益の子供が見つかったとの知らせで、長崎の施設に行くと、その日に死んでいる。
これも、涙なくては見られない代物だが、清水の演出は大変上手いものだと思う。
ただし、このように弱いものへ限りない同情を描いた清水宏だが、同じ松竹大船にいた監督西河克己に言わせれば、
「人間で、これほどまでに下の者、助監督に傲慢になれるものか」というほどに我がままな人間だったとのこと。
作品と人間は別という典型だろう。
フィルムセンター