最初から最後まで初めてきちんと見たが、傑作で大いに感動した。
青春映画であり、青春の哀しみの傑作である。
監督の舛田利雄は、アクション監督と言われるが、実は抒情的であり、また詩的である。
最後、新宿のキャバレーの楽屋で、悪玉の青木義郎を渡哲也が追い詰めて、刺し殺す。
キャバレーの裏口の金網の向こうの、映画館の題名が「汚れてしまった悲しみ」で、中原中也なのだ。
美術が素晴らしいが、当然にも木村威夫先生である。
敗戦直後、母と妹を失った渡哲也の五郎が、少年刑務所に入れられ、年上の少年待田京介と兄弟分になる。
渡は、あるやくざのいざこざで、再会した待田を刺すことになるが、その時、待田の情婦・松尾嘉代に、
「人殺し!」となじられる。
3年後、獄から出た渡は、浅草の上野組に籍をおくが、そこは新興勢力の青木の組に押されていて、常に対立している。
浅草観音で、青木の組の下っ端にものにされそうになっていた家出娘の松原智恵子を助ける。
松原智恵子は、お人形さんのように可愛いが、実は渡哲也もお人形さんのようにきれいな少年なのであり、これは良いコンビなのだ。
上野組の親分は水島道太郎で、一の子分は戸田皓久は、日活では珍しい。
その他子分は、浜田光夫らで、彼の兄は川地民夫で、対立する青木の組にいて、出入りで死んでしまう。ここも雨中のアクションですごい迫力。
また、浜田も、川地の遺骨を抱いて故郷に、素人娘の北林早苗と一緒になろうと新宿から信州に行こうとするが、駅のホームで男たちに囲まれて殺されしまう。
この頃、まだ浜田光夫、川地民夫、松尾嘉代らも日活にいたのだ。
大ヒットしたとのことで、急遽2作目が作られることになり、舛田利雄は辞退して、助監督の小沢啓一になったとのことだ。
それが、1969年の『大幹部・無頼』で、併映は小林旭とシリアポール共演の『赤道を駆ける男』だった。だが、当時好きだった芦川いづみが、娼婦になるので、憤然として馬場日活を出て、これも最後まで見なかったのである。
チャンネルNECO