伝説のフランスの劇団の22年ぶりの日本公演だそうだが、感想は、
「この程度なの・・・」というものだ。
最後、「アイル・ビー・ミート・アゲイン・サムデイ」に合わせ、能面のようなメークをした演者が扇を振りながら、ゆっくりと舞う。
「これは、東宝歌舞伎・長谷川一夫の公演『春夏秋冬』と同じだ」と思った。
見た人は、もういないだろうが、東宝歌舞伎では、一部は長谷川主演の劇で、多くは時代劇だった。
二部は、、共演の女優たちの踊りではじまるが、これがジャズ、タンゴやルンバなどの洋楽なのだ。
洋楽で日本舞踊を踊るのである。彼女たちがひと踊りした後、セリから長谷川一夫が上がってきて、さらに踊りを続ける。
これは、完全な日本的なものと西欧的なものとの混合なのだ。
簡単に言えば、松平健の『マツケン・サンバ』の先駆けである。
ついでに言えば、歌舞伎等の古典劇の公演でも、最近では主役にライトを当てることが行われているが、これを日本で最初にやったのは、実は長谷川一夫の歌舞伎の地方公演なのである。
つまり、サイレント時代から映画界で活躍してきた長谷川一夫は、映画的技法の効果をよく知っていたのである。
さて、おフランスの太陽劇団の公演では、何故かは知らないが、日本の地方の島の話で、そこは漁業の町で、女性の山村市長がいる。そこでは、演劇祭が行われるなど、市長の好む市政が行われている。
もちろん、反対派もいて、高野と渡部という男の有力者で、彼らは町の海を埋め立ててカジノを作ろうとしている。
その陰謀と演劇祭の戯画が展開されるのが1部で、このカジノ問題は、大阪府か横浜市のことで、こんな戯画的な事件がフランスでも知られていたのかと少々驚く。
休憩後の2部では、カジノ問題はほとんど展開されず、結局だめになるが、内容は深化しない。
そして、最後の舞のシーンで終わり、絶賛の嵐で幕となる。
結論はもちろんない。
終了後、宮城聡、ムーインシキン女子等で、トークイベントが行われた。
通訳者が、演劇等に不慣れだったようで、応答の多くはすれ違いのように見えた。
それにしても、会場から質問した連中が、大感激しているように見えたのは、実に不思議だった。