今村昇平は、戦後の監督で一番だと私は思う。
もちろん、増村保造も大好きだが、晩年はかなりひどくて、『この子の七つのお祝いに』や『エデンの園』はひどかったので、その分は割引して、やはり今村昇平にしたい。
これは、1963年から64年に、全国で5人を殺害した西口浩の事件を基にした佐木隆三のノンフィクション小説の映画化である。
西口事件については、小山台高校の同級生に、西口君がいて、彼は東大法学部に現役で合格し、後に創価学会が作った学生組織の新学生同盟の初代委員長になったが、
この時は、みんなで「西口、西口」とからかったものだ。
話は、原作とほぼ同じだが、ここで今村昇平が描こうとしているのは、日本の下層社会の不思議な実態だろうと思う。
西口(ここでは榎津巌)が、凶悪な殺人犯であることが分かってくるが、浜松の連れ込み旅館の女将の清川虹子は、元は殺人犯で、娘の小川真由美も、小企業主の北村和夫の情婦で、この二人の関係もすごい。一番笑えるのは、小川と北村の性交のシーンで、北村の足がつってしまうところである。
それを上回るのが、西口役の緒形拳の父親三国連太郎と、緒形の妻倍賞美津子の関係も、ほとんど近親相姦だが、倍賞の乳房も本当にすごい。
ともかく、全員が「色と金」の猛者であることがすごい。
最後、浜松のステッキガールの根岸としえの通報で、西口は逮捕されるが、実際はもっと小さな女の子の通報で、「裸の大様」だったと思う。
だが、今村は、この映画で、役者同士の演技と生理の張り合いに疲れて、劇映画が撮れなくなるのだ。
チャンネル12