冒頭に、廃館になった渋谷の映画館で、映写機を外す方の作業が出てくる。
日本に、もう映写機を製造している会社はないので、古い映写機も、次に使う館のために映写機をはずして遠い館に持って行くのだ。
そして、地方にある様々な映画館と映写機の状況が紹介される。
尾道、秋田、福島等だが、一番の辺境は高知県高田の映画館・大心館。
ここでは、流し込みという1台の映写機で、卷の異なるフィルムをつないで上映していく方法が紹介される。
今の館主は、父親から教えられた方法で、普通は2台の映写機で交合に上映するのだが、1台でする非常に珍しい方法とのことで、映画以外は、農業やウナギ取りなどで生計を立てているようだ。
福島の本宮町も紹介されて、ここは「本宮方式」として大きく取り上げられた地域だが、現在は1館だけの本宮劇場での上映会が紹介される。
そして、興味深かったのは、多くの機器が「フジセントラル」という名称で、ここは富士精密なのだ。
富士精密と言えば、旧中島飛行機の後継企業の一つで、戦前、戦中の航空機製造の技術が、映写機製造に転化していたとは初めて知った。
現在、日本は自動車大国だが、ここには戦争中の飛行機製造の中島、三菱、川崎などの技術が反映されているのは有名だが、映写機製造にも反映されていたとは驚きだった。
監督の森田恵子さんは、亡くなれているので、その追悼である。
もう1本の『最後の活動弁士・井上陽一』は、戦前からの現役活動弁士だった井上陽一氏の活動を描くもの。弁士を志した理由が、活弁の上映の時は、弁士に向かって掛け声や盛大な拍手が起きることで、普通の映画ではないので、憧れてなったというのが面白かった。
タイトルに反すが、今は映画説明者として、多くの若者がいるのだが。
国立映画アーカイブ