「カラー以後の黒澤映画はつまらない」と言ったのは、私ではない。
なべおさみである。
ユーチューブの彼のチャンネルを見ていたら、そう言っていた。
あるゴルフのとき、なべは、黒澤明自身に聞かれて、そう言ったそうだが、これは正しい。
なぜか。
カラー以後は、内容がなくなって、色のついた華麗な画面しかなかったからだ。
もともと、『天国と地獄』以後は、黒澤明に描くべき内容はなくなっていた。
海外から、いろいろと映画化の話は来たが、すべてうまく行かなかった。
そして、やっと外国から映画の話が来て、成功したのがソ連というのは、象徴的である。
黒澤明は、もともとは共産党のシンパだったからである。
ソ連とは、心情的にも親和性があったからだと思える。
撮影は大変だったようだが、ともかく映画『デウス・ウザーラ』はできたのだ。
その点、フォックスとやった映画『トラ・トラ・トラ』に至っては、製作途中で不和になったのとは、正反対である。
以後、黒澤は、もとの東宝となんとか製作するが、そこには映画とすべき中身はもうなかった。
残っていたのは、元の絵描きとしての黒澤明だった。
だから、画面はすごいが、映画としては面白くないものになったのだと私は思うのだ。