『乱』のメイキング作品の『メイキング・オブ・乱』が二週間の限定で上映されるというので、久しぶりに東中野のポレポレに行く。
1985年の黒澤明監督の『乱』の撮影時の模様を撮影したもので、御年75歳で、時代劇アクションを作るのは凄い。だが、見えてくるのは、寄せ集めのスタッフ・キャストでアクション映画を作っている黒澤の孤独さである。
そこには、映画『七人の侍』から『隠し砦の三悪人』に至る東宝の献身的なスタッフ、キャストの姿は見えない。
なぜなら、多くが東宝の社員なら、全身全霊をささげて活躍すれば、社の上司から評価されたのに、1本限りの契約者では、いくら成果を上げても、そこには評価は存在しないからだ。
ひとり老齢の黒澤明の孤独な姿が見えて、それはそれでなかなかドラマチックである。
彼も、多くのシーンで、段取り演出しているのは、これが日仏合作映画で、撮影期間がきちんと決められていたからなのかと思う。
役者のスタンドインで、助監督の渡辺恭子さんの姿が見えた。
彼女は、私と下川博の劇団異立社の旗揚げ公演のとき、ミュージカル・ウエスタン劇の作曲をやってくれた方で、桐朋学園の出身なのだ。
あるとき、彼女は稽古中に自分で自作曲をピアノで弾いたが、大変に上手いのに驚いたことがある。
もともと彼女は演劇ではなく、音楽だったからだようで、
「さすが桐朋!」と思ったものだ。
その後、1991年のパシフィコ横浜のオープニングのとき、横浜市海外交流協会は、「こどもミュージカル」を私の企画でやるこちになった。
この時に、彼女は演出協力で横浜に来ていて、何年ぶりかに彼女と再会したが、今はどうしているのだろうか。
さて、メイキングを見た後30分後に、本編が上映されるというので、見るが、やはり面白くなかった。
仲代達矢の孤独さ(それは完璧に認知症だが)と、彼の3人の息子たちの争いに作品が分裂していて、当然にも合戦場面の方が面白いからである。
この後の黒澤作品のひどさに比べれば、一応70点くらいかなとは思う。
東中野ポレポレ