民藝の公演を新宿のサザンシアターに見に行くが、寒くて参る。
話は、作者のナガイヒデミの故郷の瀬戸内地方の美容院・ノアで起きるドラマで、悪くはないが、なんともぬるい作品だった。
美容師は、昔から女性の仕事としてあったので、劇や映画になっており、渋谷実の映画『もず』でも、主人公の有馬稲子は、地方から出てきて東京で働く美容師だった。
この劇では、主人公は日色ともえで、そこは近所の高齢者たちの居場所、息抜きの場となっている。
そこが、高速道路の建設予定地になり、息子で地方銀行の支店長は、自分の預金獲得のために早く売って預金してくれと懇願してくる。
孫で大学生の娘は、美容師たちの話を聞き、生活史・民俗史として卒論としようとヒアリングする。
この辺は、面白いが、どこにもドラマがない。
二幕目は、村の生まれで、海外に行っている報道写真家の西川明が現れて、紛争地域での取材について会話するが、これは一幕と無関係で困る。
いずれにしても、ドラマが存在しない「ぬるい劇」だった。
以前の、新国立劇場の『パーマ屋スミレ』は、すぐれた劇だったことと対照的だったというべきだろうか。
紀伊国屋サザンシアター