松竹の城戸四郎は、新しい企画が来たとき、「それは、なんだ一言で言え」と聞いたそうだ。
一言で言えない企画など、大したことないもので、私も市役所にいるとき、部下にさんざ言ったものだ。
この映画も、いろんな要素が混入していて、その分だめになっている。
平安建都1200年記念だそうだが、それはどこにあるのか、不明。
京都の大学で先生をやっている益岡が、生徒に研究論文を書かせ、そこに浮島丸のことがあり、それを書いた女と、本当の作者の姉と知り合うところから始まる。
敗戦直後、京都の舞鶴沖で、沈没した韓国への引き上げ船の浮島丸のことかと思うと、二人の姉妹の父親で、詩人の白雲を探すことになる。
戦時中に、青森の鉱山で朝鮮人が強制労働されていたとのことで、そこでの苛烈な労働現場の話になる。
そこで、唯一面白いのが、石橋蓮司が演じる、韓国人の憲兵で、「日本が負けた時には、われわれは英雄になれる」と言って同胞を虐待しているのだ。
戦前、日本軍にいた朝鮮人はいたもので、後に韓国の大統領となる朴も、陸軍の軍人だったはずだ。
そして、日本の敗戦で、韓国の釜山に行く船として、浮島丸が来て、多くの朝鮮人が乗り込むが、乗らない人間もいて、それが白雲だった。
舞鶴港で、爆発、沈没し、海岸には遺体が多数並ぶ。
このシーンを見て、内田吐夢の『飢餓海峡』を思い出したが、日本映画が全盛期なら、このシーンを中心として、ダイナミックな作品が作れたであろうと思ったが。
最後、日本海側の灯台で、ガラスを磨いている白雲の佐藤慶に会う。
一緒の暮らそうという娘たちに逆らい、一人で生きていくことを宣言する佐藤慶。
これが、堀川弘道さんの遺作とは、少々可哀そうに思えた。
悪い映画ではないが、どこにも面白みがない。