1964年に松竹で作られた山田洋次の「馬鹿シリーズ」の2作目。
ここでも、主人公の安吉はハナ肇だが、相手役のお嬢さんは、岩下志麻になっている。
1作目は、桑野みゆきだったが、彼女が次第に松竹作品への不満を持ち始めていたので、岩下や倍賞千恵子へと変えていく端緒でもある。
瀬戸内海の小島に、東京から岩下志麻が疎開してくる。そこに孤児で、漁夫の花沢徳衛のところにいる、乱暴者のハナと知り合う。
この無知な男と上品な女性という組み合わせは、『無法松の一生』から来たもので、原作の岩下俊作がプロレタリア作家であるように、知的な階層の人間と、無知な労働者との組み合わせになっている。
言わば、日本共産党支持の山田洋次監督にとって、庶民は啓蒙されるべき無知な階層となる。
その典型は、まさにハナ肇だったが、やはり少々無理だったのか、かなり知的な渥美清になって、『男はつらいよ』の成功となる。
筋としては、いろいろあるが、島の先生になった岩下が、修学旅行で大阪に行き、道端で水中眼鏡を啖呵売している安吉に会う。
そこは、川に小さな橋が架かっている場所だが、私の目には、弘明寺の大岡川に掛かっている橋のように見えたが、どうだろうか。
ケチな松竹のこと、ロケ撮影も、大船撮影所の近くでやったはずで、横浜の弘明寺は最適だったように思える。