渡辺謙主演のシリーズの5作目は、『キングの身代金』で、言うまでもなく黒澤明監督の『天国と地獄』の原作で、これもほとんど同じ。脚本は、鎌田敏夫。
臨海部に住む会社社長の綿引勝彦と松本留美の子が誘拐されるが、実は運転手斎藤暁の子だったというのも同じ。
違うのは、犯人が黒澤では、貧乏医学生の山崎努だが、ここでは主犯は、元保母の川上麻衣子、相棒の中丸新将の二人組になっている。
身代金の取り換えなどがあるが、最後は川上が、6年前のやはり誘拐事件で、警視庁のエリート警部に犯人と間違われたことの仕返しであることが分かる。
黒澤作品の、横浜の丘の上に住む三船敏郎と、下部の貧乏長屋に住む山崎の恨みという貧富の差が原因というのはなくなっている。
階級的格差の消滅だろうか。
最後、二人を身代金も手にして、成田空港から、カナダ航空機で飛びたつ。
「もう1歩のところだったのに・・・」と悔しがる渡辺と同僚の平田満刑事のところに、空港職員が来る、
「妊婦が産気づいたので、戻ってきます・・・」と。
かなり鮮やかなラストで、出目にしては、ましだなと思った。