ダンスの勅使河原三郎が、文化功労賞を受賞されたそうだ。
1980年代だが、彼をインタビューしたことを思いだした。
当時、教育委員会の教育文化センターにいた、野田邦弘君の依頼で、教文センターのPR誌に載せるものだった。
教文センターのどこかの会議室でインタビューしたが、KARASの佐藤まいみさんも一緒だった。
どういう話をしたかほとんど憶えていないが、彼に
「手や足の動きは、自動的に出てくるものなのか、意識してするものなのか」聞くと、
「そんなことを聞かれたのは初めてだ」と答えたと思う。
それで、「自動的、自発的に出てくるものだ」との答えだったように記憶しているが、その原文がないので、なんとも言えない。
ただ、2001年に私は脳梗塞で、左半身マヒになった。
マヒから回復する過程で、人間の手や足の動きは、すべて脳がいちいち指示し、考えていて、自動的、自発的というのはほとんどないのだと自覚した。
それは、こう言うことだ。
当初、左手はまったく動かなかったが、少しづつ動くようになった。
そして、ご飯を食べるとき、右手に箸を持ち、左手で茶碗を持つ。
それがなんとかできるようになった。
ところが、この左手の茶碗だが、一度持ったら、そのままで、離さないのだ。
今度は、お椀を持とうとしても、左手はお椀には行かないのだ。
つまり、「茶碗は終わったから、今度はお椀を持てよ」と脳の中で思い、命令しないと左手はお椀に行かないのである。
だが、それも次第に自動的になって行った。
人間の動きというもの、反射的にやっているように思い、日々行なっている行動も、すべて脳が命令していて、その積み重ねの上で、反射的な動作ができるものなのだとそのとき、初めて知ったのだ。
だから、ダンスから舞踊、演劇、さらにスポーツの動きは、実は個々の行動の裏には、無限の脳の命令と指示があるもので、それをあたかも考えていないようにするのが、練習、稽古なのだろうと思ったのだ。
勅使河原さんにも、佐藤まいみさんにも、ずっとお会いしていないが、ご立派な成果を残されて来たのだろう。
文化功労賞の受賞を心からお祝いしたい。