1961年の松竹京都作品、監督井上梅次、脚本は八住利雄で、原作は樫原一郎。
大正15年3月、警察官になるため、鹿児島の大木実と福島の佐田啓二が上京してくるところから始まる。
警官、刑事の目から見た昭和史であり、木下恵介監督の『喜びも悲しみも幾年月』が、灯台守の目から見た昭和史と同様の趣向である。
大木は、サツマッポの堅物で、対して佐田は世慣れていて、故郷には許嫁の乙羽信子までいる。
二人は、浅草で警官になるが、すぐに刑事になる。浅草で、スリの父親の息子の三井弘治は、スリをやめて寿司屋になる。
昭和初期の説教強盗や、ピストル強盗などの事件もあるが、刑事の活躍と努力で順次解決される。
そして、満州事変から太平洋戦争になり、大木は高千穂ひづると結婚するが、その初夜の模様が笑える。
佐田には、三上真一郎と桑野みゆき、大木には津川雅彦が生まれるが、高千穂は肺炎で、大木はガンで死んでしまう。
戦後になり、新橋の闇市での、日本人と三国人との衝突、違法な取引をしている会社の人間になった佐田の元同僚の諸角啓二郎など、戦後の様相は面白い。
ここの美術が、元新東宝の黒沢治安なのはどうしてなのか。
新東宝は、この時期倒産間近だったので、松竹京都でやったのだろうか。
この時期の浅草など、当時の風俗はかなり的確に表現されいるように思える。
そして、日本の独立から、メーデー事件、さらに60年安保になる。
三上真一郎は、中卒で電機会社に就職しいてるが、そこで労働争議が起きて、彼は組合の運動に参加sじ、最後は逮捕される。
津川雅彦は、父の後を継いで刑事になり、活躍してゆく。
桑野みゆきと結婚する仲と思われたが、意外にも牧紀子と結婚する。
この三上真一郎らが、労働争議で逮捕される場面は、後に井上梅次が入ることになる、東宝争議の場面のように見えてくる。
最後、警視庁でも最高齢になった佐田を、安陪徹が
「二瓶老人・・・」と呼んでいるのには驚く。
このとき、佐田は、52くらいなのだ。
55歳定年で、佐田は警視総監原文兵衛から、勤続35周年で表彰されて退職していく。
佐田は、大木の墓に行き、水をかけて祈る。
木下恵介の『喜びも悲しみも幾年月』に比べれば、やや暗い感じがするのは、題材が刑事だからだろうか。
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