1939年5月、ドイツのハンブルグ港からアメリカの客船が出航する。
乗客のほとんどはユダヤ人で、当時次第にひどくなったナチスによるユダヤ人迫害を逃れる900人たちだった。
ドイツ人船員には、明かな差別意識を示す者もいるが、船長のマックス・フォン・シドーは、公平で冷静な態度で臨む。キリスト役者の彼の落ち着いた演技がよい。
行く先は、キューバで、ドイツからの出国ビザはあるので、入港・上陸できると思っていたが、ハバナ港では足止めをくらう。
当時も、バチスタが権力を握っていたが、当局は腐敗していて、上陸には金を払えとの態度で、ついに上陸できない。
この間に、いろいろな事件が起きるが、要は「グランドホテル」形式のドラマで、フェイ・ダナウェイ、オーソン・ウエルズ、ジェームス・メイスン、キャサリン・ロス、マルコム・マクダウエルなどのスターが総出である。
イギリスやアメリカにも入港は断られているが、これは両国も、国内に反ユダヤ思想があったからだろう。
チャーチルも、ユダヤ系のシェル石油を信用せず、わざわざBPを作ったくらいだ。事実、シェルは、最後までナチスドイツに石油を売っていた。
アメリカには、親ドイツの動きがあり、欧州の戦争不介入の「アメリカ・ファースト」運動があり、代表は、あのチャールス・リンドバークだった。
船長は、最後に考える、岩礁で座礁して救助されることも。
だが、最後オランダ、ベルギー等の同意で、オランダのアントアープ港への入港許可がある。
だが、すぐに1939年9月にドイツがポーランドに侵攻し、オランダ・ベルギーも占領されてユダヤ人迫害が起きる。
その後、900人中、約600人が殺害されたとのことだ。
イギリス映画なので、淡々と進行し、やや劇的盛上がりには欠ける。