私が苦手なものの一つに、ダンスとシャンソンがある。
お上品なものがダメで、ダンスの中でも、もっとも評価が高いのが実は、舞踏なのだ。
国内はともかく、世界的に日本発の芸術ジャンルとして評価されているのが舞踏なのである。
この夜の、映画上映の後のトークで初めて知ったのは、ヤスカズが若いときに土方巽のところにいたとのことだった。
1970年代に、日本で騒がれていたヤスカズは、二度見て私は到底良いとは思えず、その旨中村とうようさんに話すと、
「その通りだ、第一にあんなに民俗楽器を舞台に並べるのは、実はいちばん金の掛かることで、彼は大金持ちなのかね」と言われ、中村とうようさんと最初に合意した事柄の一つだった。
ヤスカズの大げさな演奏も、土方的なものの最悪の継承なのだったのかと、あらためて思った。
1972年10月に、新宿文化で上演された土方巽の『疱瘡譚』の16ミリフィルムによる撮影で、監督は大内田圭弥。ほぼ上映が据えっぱなしのカメラで撮影されている。
土方巽の映像としては、1968年の日本青年館での『肉体の叛乱』の数分間のものくらいしかなく、全部のものはこれしかないとのこと。
ただ、『肉体の叛乱』が動的で、メッセージ性も強く持っていたのに対し、『疱瘡譚』は、病み衰えた土方の肉体そのもので、かなり痛々しいところもある。
ただ、当然のことながら、映像では、本当の演技から得られるはずの彼の肉体が発する「詩」は感じられない。
構成では、冒頭は瞽女歌で、その他アリアなどが続くが、音楽と舞踏は実は無縁で、稽古のときに音楽はなく、またまったく別の曲がながされていたこともあったのだそうだ。
トークで、いろいろなことが話されたが、この1972年の上演で、今も踊っている人はほとんどいないのだとのことだ。
それは、「本当の芸術が青春のもの」だからだと私は思う。
若葉町ワーフ