1963年の公開当時、「真っ赤な嘘の物語」と言われ、知人で見た人に聞くと「ひどかった」とのことで今まで見ていなかった。
監督の井上梅次については、早稲田大学の映研の金子裕君も、「もう古いんじゃないの」と言っていた。
これは、低迷していた当時の松竹で、岡田茉莉子の新企画として作られたもので、メリメの『カルメン』を基に松竹では珍し白坂依志夫の脚本となっている。
話は、カルメンのように、愛への情熱で男を次から次へとわたり、最後は破滅する女性歌手となっている。
横浜のクラブ・ハバネラ、そこの歌手マキの岡田茉莉子とできて、クラブの支配人でヤクザの根上淳を裏切った若い男松原緑郎が射殺されるところからタイトル。
松原は、死ぬとき、マキと昨日できて、その見返りに赤いバラをもらったと柱に、「マキ」と書く。
いちいち、画面の下で赤いペンキを付けているのが分る。
横浜駅に、刑事の吉田輝雄が来るが、男たちに連行されて、倉庫の事務所で、南署の刑事安部徹と会い、ハバネラが麻薬取引の巣窟なので、そこのバンドのピアニストとして潜入して捜査してくれと頼まれる。
マキは、吉田のピアノが気に入り、すぐにできてしまう。
そして、吉田から中華料理屋の出前に扮していた刑事を通じて取引現場を押さえられる。
この出前の刑事は、山本幸栄さんで、横浜のアマチュア劇団葡萄座の代表で、松竹大船で脇役をやっていた人である。
根上淳と吉田、岡田の三角関係もあるが、元々は根上のボスだった大木実が戻ってくる。
これが、片目といい、本当に右目にアイパッチをしているが、現在では表現できない姿だろう。
もちろん、もとは岡田は、大木のものだったのだ。
そして、第二の麻薬の取引があるが、そこでは吉田は、警察を裏切って金を大木と山分けにする。
その間に、邪魔になった根上の両足をモーターボートに別々に引っ張って殺すという、石井輝男的表現もある。
最後、店に若い歌手でダンサーの藤木孝が現れ、またしても岡田は、これに惚れてしまう。情熱的というより、ただ無性格な女としか見えない。
最後、岡田は吉田と共に、大木の手下に殺され、そこに安部らの警察がきてエンド。
藤木のショーの演出は、和田肇で、この人は和田浩治の親父で、戦前から有名だった男だ。
一番白けるのが、音楽が黛敏郎で、岡田が口ずさむのがビゼーの『カルメン』の歌曲で、岡田ではなくオペラ歌手の吹き替えであることだ。
唯一の救いは、松原の妹で、ハバネラで花売り娘の榊ひろみが出てくることで、これは結構かわいい。
衛星劇場