高校1年の12月末に、偶然に大森の本屋で見つけたのが松本俊夫の『映像の発見』で、完全に感化された。
翌年に吉本隆明を知って、これまた信者になったが、松本の本の何編かは、暗記するほどまで読んだ。
だが、3年の夏に、中核派の集会で見た松本俊夫監督の映画『安保条約』には唖然とした。
「これが、松本俊夫監督の映画なの? 総評からの委嘱映画としても、この単純さ、稚拙さはなんだ」と思った。
松本の映画は、ほとんど見ているが、『薔薇の葬列』が最高だと思うが、「これはその次かな」と思った。
川崎市民ミュージアムの本によれば、この映画はプリマハムの金で作られたとのこと。
松本の映画で、良いのはカメラマンがよいことで、これも鈴木達夫で最高である。
音楽は湯浅讓二で、冒頭は1960年代の前衛音楽風だが、次第に抒情的になる。
ナレーションは岸田今日子で、詩は寺山修司で、彼はなにもしなかったが、松本以下の4人の撮影隊に同行したとのこと。ただし、ベトナムは「怖いから」と言って行かなかったそうだ。
ニューヨークのハーレムのアフリカ系アメリカ人の母と子供たちの映像。
そこに寺山修司の詩が入る、
「母は海である、子供にとってのすべての水だ」という具合に。
次は、フランスのパリのユダヤ人のような家庭の母と子。
ベトナムに行き、町の市場から戦場に近い農村での母の生活の中の子供たち。
そして、アフリカのガーナに行く。
海岸近くの町、そして海岸で戯れる母と子。
これは、ベネチア映画祭で賞を取り、プリマハムも大喜びしたとのこと。
これの前に寺山修司監督の『檻囚』(おり)が上映されたが、何これと言うしかない。
ドイツ文化センターの近くは、以前はよく行っていたが、こんなに遠かったのかと驚く。