昭和も、もう30年以上前のことで、「その感じが映像化されている映画は、ないか」と、
以前に若い人に聞かれたとき、私が推薦したのは、1973年の日活の『妹』である。
これは、林隆三と秋吉久美子の兄妹の話で、脚本は当時早稲田に住んでいた内田栄一、監督は藤田敏八、音楽は木田高介である。
鎌倉に行っていた秋吉が早稲田に地下鉄で戻って来たところから始まる。
「あいつ、気にいらないから別れてきてやった」と秋吉は宣う。
秋吉は、大門正明と民芸品の鎌倉の店をやっていたのだが、出てきたのだと言う。
大門は、声だけで姿は出てこない。実は、秋吉が事故で殺してしまっているのだが、ラストまで分らない。
林のところは、両親は「毎日食堂」をやっていたが、彼は「俺には向いていない」と言って店を閉めて運送屋をやっている。
そこに林の恋人である吉田日出子がやってきて、
「女性のための合気道教室をやりたい」などと言ってくる。ここもいきなり吉田が掛け声を掛けたりして面白い。
林は、鎌倉に行き、店番をやっている妹の吉田由貴子と話している内に、劣情をもよおおしてしまい海水浴場のトイレで性交してしまう。
早稲田に帰ると、吉田に言われる
「体と体で話し合ってきたのね、最低ね、さっき鎌倉から電話があったのよ・・・」
「私、お兄さんに私犯されました・・・」秋吉久美子
林は反論する「あいつの罠だ!」
「自分から罠に落ちたのね、随分と都合の良い罠なのね」
吉田は、秋吉を都電に乗せ、王子駅に行き、初井言栄の焼き鳥屋に連れて行く。
そこで、トルコ嬢の片桐夕子に告白する。
二人は、ケンカしていて、崖で大門にぶつかると落ちて死んだというのだ。
殺人ではなく過失なので、不起訴処分くらいだと思うが。
林は、近所の写真館で花嫁衣装を着て、写真を撮る。技師は藤原釜足。
そして、秋吉は姿を消してしまう。片桐夕子は言う、「探さない方が良いよ、探すと死ぬよ」
鎌倉の店、原宿のフリーマーケット、荒井由実の音楽、原宿の店にブランコのある喫茶店、都電など、非常に昭和的な雰囲気を感じられる作品である。
因みに、日活はすでにロマンポルノ時代だったが、これはポルノではなく一般映画だった。