太田博之君は、私と小学校、中学が同じで、大田区池上小学校、大森第四中学校である。
それぞれ小4の時に来て、中2の時に私立に転校していった。同じクラスになったことはないが、実にきれいな少年だった。
当時、池上小には、外国人に見える子供が2人いて、一人は銀座のドイツレストラン・ケテルの息子で、これはケテルの工場と社長宅が堤方町にあったためだった。
もう一人は、竹内さんという女の子で、金髪で色白、背の高い子で、私と同じクラスだった。
悪ガキどもは、「インディアン」と渾名していたが、白人系の血を受け継いでいるように見えた。
そして、太田博之君で、どこにも外国人の情報はないが、どこかに外国人の血が入っているように見えた。
新東宝、日活、テレビに出ていたが、これというヒットはなかった。余りに美しすぎて、リアリティがないからだろうと思える。
『剣客商売』では、旗本の息子で、浅草の香具師の親分安部徹の娘徳永れい子と恋仲になってしまう。
最初に、安部の子分の田中浩らに暴行されて、加藤剛に助けられていう言葉が傑作。
「今どき、女性にもてるのも命がけですな・・・」
相当に浮世離れしたお坊ちゃんで、彼のルックスの美しさに良くあっていた。
彼を助けたことを、加藤剛が父の山形勲に話すと、「父親を教えたことがあるぞ」となる。
腕は全くだめだったが人柄はよい男で、灰地順である。
灰地は、劇団演劇座の俳優で、秋元松代さんの『常陸坊海尊』を唯一上演した劇団である。
安部徹は、灰地の屋敷に乗り込み、徳永を家に入れろと言うが、灰地は、
「低いとは言え、旗本の当家に、浅草の香具師の娘が入れられるか」と拒絶する。
この辺の身分意識は信じがたいが、当時の現実だろう。
徳永は、岡っ引きの山田吾一の家に、太田君は加藤剛の家に匿われる。
加藤の道場に、安部徹が子分と全員で殴り込んでくるが、加藤と山形は見事撃退する。
だが、山形は言う、「最後まで子分14人全員が戦ったのはすごい、大したものだ」と安部徹を賞賛する。
太田と徳永が本当に好き合っていることが分かり、山形は二人を結婚させることにする。
それには、徳永を田沼意次の家来の家の養女にして、二人を結婚させるのだ。
そして、安部は隠居し、組を子分の田中浩に譲らせる、本当は、この男は、徳永が好きだったのだが。
だが、灰地は、徳永の嫁入りに強く反対する。
その時、山形は言う、「あの女にできている子はどうするんですか、あんたにとっても最初の孫になるのですよ」
帰りの道で、加藤は聞く、「子の話は本当ですか」
「嘘も方便、いずれそうなるさ」
灰地が実に適役だった。