『いまはむかし』を新宿に見に行き、以前見たと思っていた『奈緒ちゃん』も、続いて見ることにすると、見ていないことに気づく。
シネマジャックでやっていて、見たように記憶していたのだろう。また、その一部が瀬川順一氏を描いた『ルーペ』でも使われていた性だと思う。
横浜市瀬谷区に住む西村夫妻の長女の奈緒は、テンカンと知的障害、情緒障害の多動である。障害の程度で言えば、軽度で、上飯田小学校の養護学級に行っている。
生まれつきの障害児は、圧倒的に男が多いので、区にいたとき、何故かケースワーカーに聞いたことがある。
すると即座に彼女は言った
「当然でしょう、男はノーベール賞を取る人もいるが、障害者もいる。女性は概ね普通なんです」
生物学的には、女性の方が完全で、男は不完全なものなのだそうなのだろう。
西村家の母親信子さんは、伊勢真一の姉で、彼は奈緒の8歳のお宮参りから撮影することになる。
小学校から中学へ、信子さんは、少女から女性になっていくことも心配する。
そして、彼女は、同じ学級の子供のお母さんとグループを作り、内職からバザーなどをする。
その資金等を基に、地域作業所を作るまでになり、奈緒ちゃんも20になる。
上映終了後の伊勢監督との対話で、音響の木村氏は、
「これの主人公は、奈緒ちゃんではなく、お母さんだ」
その通りで、高名な記録映画編集者伊勢長之助氏の長女信子さんがやったことは、まるで映画の編集作業のように見える。
映像や音響等の素材を使用して映画にする編集、まるでその作業のように西村信子さんは、障害児を持つ母親たちを纏めて地域作業所を設立するまでに行く。
また、ご主人の理解と協力も大きかったと私は思う。
障害児を持つと、母親は子と一体となり、そこから父親は排除されることが良くあり、家庭崩壊に至ることもあるのだ。
民間企業の営業職のサラリーマンの他、地元少年野球の監督もやっていた西村氏は、その辺は大変に理解のある人だと思える。
また、これは、1990年代の普通のサラリーマン家庭の姿を記録した作品だと思う。
K’Sシネマ