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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『パレードを待ちながら』

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このパレードとは、第二次大戦に参加するための軍隊の行進で、場所はカナダのカルガリーである。

カナダ軍は、香港では英軍と共に日本と戦い負けているが、ここで動員されるカナダ軍は、イギリスと欧州戦線に送られる軍隊である。

日本の戦時中のように、町の女たちは、包帯を巻き、駅で停車する兵士たちのための慰問品等を作っている。

感じとしては、向田邦子の戦時中の劇のようだが、作者はカナダの劇作家ジョン・マレルで、向田のような皮肉はない。

5人の女性だが、戦争への協力については、微妙に差があることが分ってくる。

ドイツ系の女性の父親は、強制的に収容所に送られ、戻って来たときには精神を病んでいて、自分の娘すら分らなくなっている。

町で、ラジオのアナウンサーをやっていて、男なのに徴兵されていない者の妻で、戦争協力の先頭に立って、女たちを指揮していた女は、夫が若い女と浮気したことを知り、激怒する。

戦争のために男がいないとき、もてるのは当然のことだろうと思う。

そして、1945年4月、戦争はカナダも加わった連合国の勝利で終わる。

日本への戦いは、まだ続いていたのだが。

カルガリーは、カナダ西部で、さすがのドイツのVロケットも来ないだろうと思えるが、空襲警戒の訓練をやっていたのは驚く。日本の風船爆弾なら、あるいは届いたかもしれないが、ここでは言及されていない。

戦勝国にも、日本のような悲喜劇的な銃後の時代が広がっていたことが分る作品だった。

演出の田中麻衣子は、もう少し女たちを明確にかき分ける必要があったと思った。

紀伊国屋サザンシアター


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