ひどい暑さの中、大塚に行って劇団俳小の『チーチコフ 死せる魂より』を見に行く。
劇団俳小は、元劇団俳優小劇場で、よく知られているように演出家早野寿郎の劇団だったが、今は斎藤真さんが代表になられている。
斎藤真って誰だ、と思われるだろうが、黒木和雄監督の傑作『祭の準備』で、田舎の美人竹下景子の処女を奪ってしまう共産党のオルグである。
これを、川崎文化で見た時、思わず「斎藤さん!」とつぶやいてしまった。大学の3年上の先輩なのだ。
彼のお父さんは、ロシア語の翻訳をやっていたそうで、劇団俳小の公演もロシア作品が多いようだ。
今回は、ゴーゴリー原作の『死せる魂』を原作としたブルガーコフ脚色の『チーチノフ』
家には、春陽堂版の世界文学全集があり、ゴーゴリーもあるが、読んだことはなかった。
話は、ある地方の下級役人チーチコフが、死んだ農奴の籍を買い集めて一儲けしようとする。
何千にも死んだ農奴の籍を安値で買って、ロシアの黒海地方の農地に移住することにする。
その間で、各地の富豪、役人等の腐敗、堕落が描かれるが、一種のブラックユーモアである。
そこに歌と音楽がつくので、一種の小劇場ミュージカルの感じだった。
かつて黒テント・演劇センターがやっていた、小劇場ミュージカルに似た感じで、上田亨の音楽がクルト・ワイル風で良かった。
もちろん、最後は悪事がばれて終わる。
リアリズム劇が多かった俳小では珍しいミュージカルだが、佐藤信の才能の枯渇後、精彩を欠いている演劇センターも、こういう劇はやっていないので、この路線はあり得るのではないだろうかと思う。
終了後、一緒に見に行った先輩と喫茶店に入って話す。
「あれも、これも死んだよ」という話で、まったく年だなと思う。
それにしても、萬劇場という、地下3階で、エレベーターのない劇場はひどい。
豊島区は、一応池袋演劇祭に300万円補助しているそうだが、そんなことより、こうしたひどい劇場のバリアフリー化に補助金を出す方が意味があり、公共のすべきことだと思うのだ。