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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『闇を裂く口笛』

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1960年の沢本忠雄主演の日活映画。沢本は、小林旭、川治民夫と「日活の三悪」として売られた。ただ、沢本は悪人ではなく、むしろ悪になれない心弱い役だった。ここでも、ダムの補償金を詐取しようとするヤクザ連中に、偽の息子に仕立てられるが、できない気の弱い学生を演じている。下宿に二人の大学生がいて、一人はまじめな沢本で、もう一人のもう大学は辞めようと思っているのは、高山義彦という俳優で、民芸の梅野泰靖に似た感じの男優である。冒頭に、ヤクザ同士の出入りがあり、一人が殺される。すると、組長の加原武門は、犯人の代わりに高山に警察に出頭させろと言う。そして、二人の下宿に、田舎から義理の妹の笹森礼子がやってくる。高山の実母が、危篤なので早く戻って来いというのだ。組長の加原は、本当に悪人面で本当に怖い顔である。人間関係が複雑で、笹森は、兄である 高山の顔を知らないし、実母は、病気で目が見えなくなっているとのこと。これ幸いと、組員の草薙幸二郎は、「高山の代わりに、沢本は息子になって、田舎のダムに行き、実母が持っている補償金を取って来い」と加原に命令される。ダムの湖畔に小屋があり、そこで休憩所を母親が、もう一人の娘の高田敏江とやっていて、この母親が飯田蝶子で、これがさすがである。高田の婚約者で、別の店を自分たちでやろうとしているのが、武藤章生と初期の日活の役者たち。草薙は、目の見えないのをいいことに、飯田に沢本を高山と信じ込ませ、補償金400万円を取ろうとする。この辺は、非常に良くできていて、オードリー・ヘップバーンで映画化された『暗くなるまで待って』の先駆的作品。
       警察に出頭していた高山は、下宿の管理人から妹が来たことを知らされて、警察署から逃走して、ダムの村に行く。そして、沢本に再会したとき、拳銃の音。草薙が、拳銃で沢本や笹森を脅していたいことは、きちんと見せている。小屋に入ると、草薙は死に、笹森と飯田がいる。飯田は言う、「私が殺したんだ・・・」そして、追ってきた警察に高山は逮捕され、連行されるとき、口笛を吹く。『新世界』の「夕空晴れて」である。これは、高山のクセで、「あっ、清だ(高山の名)!」と言う。監督は、森永健次郎で、脚本は原源一。欧米の推理小説の翻案のようにも思えるが、非常に良くできた作品だった。衛星劇場

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