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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『八十八夜の月』

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1962年の松竹大船、市村泰一監督作品。1960年代中頃の松竹は市村や番匠義昭監督の作品は多く、日活や東宝、東映に比べて面白くなかったと言うよりも、古いなあという感じだった。
                       静岡の製茶の老舗三島園で、祖母の三益愛子の下に、藤間紫、高千穂ひづる、環三千代、そして岩下志麻の四姉妹、一人息子の宗方勝巳は、演劇をやっていて、いつも金の無心をしている。藤間は、聟に佐野周二をもらっていて、東京に茶舗を持っているが、株の売買にも手を出している。岩下は、大学でフランス語をやっていて、エール・フランスのスチアーデス試験に合格する。彼女の恋人は、フランス文学研究者の松原緑郎で、共にフランスへの強い憧れを持っている。意外にも松竹大船には、「フランス病」があり、大したことのないメロドラマしか作らなかった監督原研吉は、フランス詩の研究家だったとはおどろく。
ここでもフランス病はあるが、松原が結核で死んで、岩下は悲嘆にくれて会社をやめてしまう。高千穂は、幼い頃から使用人の菅原文太と相思相愛だったが、絵の勉強に言ったフランスで結婚しまい、文太は降られる。菅原と言い、松原といい、元新東宝組は、松竹の異分子として排除される運命だったのか。
これを見て思ったのは、松竹の演技は、演技しないと言うことだとあらためて思った。全体にドラマは少なく、藤間の株が暴落して右往左往するところと、高千穂がフランス人の夫を連れてきて、三益が激怒するところ程度にしかない。島津保次郎以来の日常的で、普通の抑揚の低い台詞廻しが、松竹の演技の方法論である。これは、日活の中平康らにも受け継がれていると思うのだ。
衛星劇場



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