ヒトラーとトランプ

私は、ヒトラーとトランプを同一視するのは、違うと思っていた。

　　　　　　　　　　
たしかに、その排外主義的な言動、大げさな身振り、手振りなど、似ているところはある。また、ヒトラーもラジオや映画という新規メデイアを駆使し、トランプもテレビとツイッターを使ったところも類似している。だが、美意識は完全に違うと思ってきた。ヒトラーは、映画『意思の勝利に』に典型に、壮大でシンメトリーな画面が好きだが、トランプには美学はない。あるのは、メラニー夫人のひきった顔に見られる趣味の悪さである。それは、一応は美学生だったヒトラーと、文化芸術に興味のないトランプとの差である。ただ、どちらも無智であることはよく似ている。ヒトラーは大学落第だし、トランプが自己の大学時代の成績の公開を禁じている理由は、それほどにひどかったからだろう。
さらに、演説はどちらも上手い。ドイツ語は分らないが、トランプの英語は簡単な単語ばかりで、繰り返しがと単純な強調が多く、非常に分りやすい。おそらくラスト・ベルトの白人労働者層に容易に受け入れラレ他のだろうと思う。このラスト・ベルトの白人労働者が主人公の映画に『ディア・ハンター』がある。フィラデルフィア近郊の鉄鋼所の町クレアトンの若者が、ベトナム戦争に徴兵され、心身ともに傷つく話だ。「ああ、アメリカも傷ついたんだな」と思ったものだ。おそらく、彼らは、その後のグローバル化の中で、アメリカ経済の地位の低下の中で、「一体、どうなっているのだ、あの偉大なアメリカが」と思い、4年前にはトランプに投票したのだろう。そして、今回の敗北と国会乱入事件である。ヒトラーが政権掌握後、最初のやったのは、国会議事堂放火事件だった。この事件のでっち上げで、共産党員を逮捕し、ドイツ国家の全権を掴んだ。今回も、トランプ主義者が国会に乱入し、乱暴を働いたのは、象徴的のように見える。それは、言うまでもなく法と民主主義への破壊である。