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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『戦場のなでしこ』

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1959年の新東宝映画、脚本・監督は石井輝男。1945年夏、日本は負ける。舞台は満州の新京、長春である。軍病院の看護婦長は、小畠絹子。大空真弓、三ツ矢歌子、原知佐子(当時は、田原知佐子)、星輝美ら新東宝女優総出演で、出ていないのは、三原葉子と久保菜穗子くらいだろう。
                       
中の5人に、進駐しているソ連軍から奥地に行くことが命ぜられて長春を後にしていく。病院の外観は、帝冠様式で、以前は東中野駅前にあった日本閣だろうか。そのとき、匪賊の襲撃があり、軍医の宇津井健が駆けつけて来ていたが、病室内で流れ弾に当たって星輝美が最初に死ぬ。三ツ矢歌子ら5人がさらに奥地への移動が命ぜられて行くと、そこは病院ではなく、ソ連兵の宿舎。風呂に入れられ、ドレスに着替えさせられて兵士達の慰み者にされる。なぜか三ツ矢歌子は、運良く難を逃れる。中で、一人だけ原知佐子が慰安所から長春に逃げてくる。途中で銃撃されるが、傷ついて病院になんとか着き、「奥地が病院ではなく、慰安所である」ことを言って死ぬ。全員が怒り、小畠絹子は、病院の中国人の総務(大友純)に抗議するが、大友は反論する「日本人がわれわれにやってきたことじゃないか、今度はこっちがやっているだけだ」宇津井と小畠は、ソ連の幹部に抗議し、実態を言い、慰安所の女達を救い出して長春に戻る。ところが、小畠が約束の時間までに戻ってこなかったとして、病院の看護婦達は、全員自殺する。「きれいな体で日本に戻りたい」と。戻った宇津井と小畠は、全員の白衣の死体を目にする。これは、半分は、ソ連批判だが、同時に白虎隊のような、事態を誤解しての早すぎる自死のようにも見える。彼ら白虎隊は、城の火事を落城と間違えて腹を切ってしまったのだ。
途中で、慰安所から病院に戻る宇津井のシーンがいきなり晴天から雪になってしまう。これは、御殿場ロケを早く止めて戻れという、大蔵貢ら会社に抗議して、わざと間違えて繋げたのだそうだが、会社はそのまま公開してしまったのには石井は仰天したとのことだ。


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