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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『無頼』

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『無頼』と言っても、渡哲也のシリーズではなく、井筒和幸監督の8年ぶりの新作である。
            戦後、極貧に生まれた主人公が、チンピラからヤクザになり、東海地方のボスにまでなることを、日本の昭和、平成の時代の変化に合わせて描いた作品である。このアイディアは悪くない。時代を一人の人間の生涯と共に描いたのに、今村昌平の映画『にっぽん昆虫記』があり、大傑作で、これは、左幸子の体を通じて日本の戦中、戦後を描くものだった。男の肉体を通じて、戦後を描くのは悪くない。だが、主人公の松本利夫があまりにも貧弱なのだ。こういう映画は、スターの肉体の輝きで支えられるものである。ここには、そうした輝きはどこにもない。また、悪役が誰だかよくわからず、善悪の対立もないので、ドラマは盛り上がらない。最後、60歳を過ぎ、主人公はヤクザを辞め、東南アジアの子供達を救援することに残りの人生をかけるとのこと。本当に、ご苦労さん。
一つだけ同感したのが、銀行が融資を渋るので、バキュームカーから汚穢を店舗にぶちまけるシーンだった。横浜でも、昔し尿処理業者の転業への不満から、関内駅口に汚穢がぶちまけられたことがあった。夕方、電車に乗るために出口を通ると、数時間たっていたのに、猛烈な悪臭だった。館内は、ガラガラだった。シネマジャック



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