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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『真夏の夜のジャズ』

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この映画は、1960年代によく名画座で上映されていて、私はジャズ少年だったが、見なかった。たぶん、当時は私も、蔵原惟繕・山田信夫・川治民夫映画の主人公のように「ジャズは黒人で、白人ジャズはジャズはない」とのイデオロギーを信じていて、白人ジャズが主流のこの映画には反発を感じていたからだろうと思う。今回、公開60年とのことで上映された作品を見ると、第一には、「この頃のアメリカは良かった、当時のわれわれが憧れるアメリカだったなあ」と思う。
             1958年7月、前年12月にはソ連の人工衛星スプートニクで、宇宙競争には負けたが、アメリカはすべてに世界一で、平和で安定した、非常に良い時代だった。ケネディ直前の、共和党のアイゼンハワー政権下だったが、安定して平穏な時代と社会だったことが、これを見ると本当によくわかる。ドラッグ、人種対立と混乱などはなく、トランプなどという変な男の大統領もいなかった。些細に見れば、このニューポート・ジャズ・フェステイバルは、白人中心のジフェスティバルであり、異質なのはチャック・ベリーだが、ここでは彼も大人しく演奏している。
まず、白人のジミー・ジュフリー・スリーから始まる。次は黒人のセロニアス・モンクだが、あらためて聞くとその音が非常に変わっていることに気づく。ちょうど中間くらいに、チコ・ハミルトンの「ブルー・サンズ」があるが、これは私は毎夜聞いた曲である。ラジオ関東の深夜放送に本多俊夫の『ミッドナイト・ジャズ』があり、番組の始まりの曲だった。観客もきちんとした服装で、男には背広でネクタイの者もいて、女性は口紅を指している。ミュージシャンには背広・ネクタイの者もいて、ルイ・アームストロングとジャック・テイ・ガーデンは、蝶ネクタイをしている。だが、なんと言っても感動的なのは最後のマヘリア・ジャクソンであり、これには言葉はいらない。公開後60年、本当にアメリカは大きく変わったなとあらためて思った。黄金町シネマジャック





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