昨日見た『ようこそ映画音響の世界へ』のなかで、技術者が擬音を作るシーンがあった。これを見て、元松竹の小林久三の『雨の動物園』に、大船の擬音担当のことが書かれていた。小林は、助監督として大船に入り、松竹の寮にいたが、そこに舎監のような人がいた。彼は、戦前は役者だったらしいが、当時は寮の舎監をやっていたが、時として撮影所にバイクで通っていた。あるとき、アフ・レコに小林が出ると、その人は、スタジオで主演俳優の足音を床に這いつくばって、靴に自分の両手を入れて、岩下志麻と園井啓介の足音を付けていた。つまり、元俳優で、日常的には寮の舎監をやりつつも、アフレコでは擬音担当するとは、実に松竹らしい人の使い方、義理と人情の人事管理だと思った。
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