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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『君よ憤努の河を渉れ』

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1976年のこの映画を横浜松竹で見た時、たぶんフィルムの運搬事故があり、同じ場所を二度上映していて、観客が「またかよ」と騒いでいたことがあった。私は途中から見たので、その重複上映はわからなかったが。この憤努を当時、当時市会事務局にいた今井和隆君は、「ふんどし映画ね」と言っていたが、私にとってのフンドシ映画は、『幸福の黄色いハンカチ』で、確か小林信彦だったと思うが、あのラストがハンカチではなく、黄色いフンドシだったらと私も思ったものだ。
            
新宿の歩行者天国で高倉健が、いきなり伊佐山ひろ子に、「強盗犯だ!」と名指しされ、警察と検察に追われる。新宿から能登、さらに北海道の日高に行き,熊に襲われていた中野良子を助けたことから、中野に助けられる。当時、中野良子は人気だったが、一応新しい女性、女優像を示していたと思う。飛行機で日高から鹿島に飛び、長野を迂回してまた新宿に戻り、ここで馬が新宿西口を疾走する。今見ると大したことないが。これで面白いのは、刑事の原田芳雄で、どこか適当に演じているように見える。それは中野の父親の大滝秀治も同じで、きわめて冷めた演技である。最後は、財界のボスの一人の西村晃が医者の岡田英次らと組んで起こした事件を検察官の高倉が暴こうとした故の冤罪事件であることが分かる。まるで、市川雷蔵の名作『ある殺し屋』みたいだなと思ったが。
製作は、永田プロと大映映画で、実際は大映で作ったようで、撮影は小林節夫、特殊撮影監督は崎山周、飛行撮影も山本駿と旧大映のスタッフの総動員。このクラスの娯楽大作ならパナビジョンで撮るべきだったが、たぶん大映の古い機材で撮影したようで、画面がきれいではない。ただ、この映画の成果としては、高倉健と中野良子が中国で大スターになったことがある。私も、1979年に中国に行ったとき、これは広州で上映されていて、「ヒットしているのだな」と思ったものだ。また、この製作に徳間康快が協力しているが、これを機に徳間は、映画分野での日中交流を始めることになるなど、これはいろんなところに影響があった作品だった。


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