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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『狂熱の季節』

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1960年の日活映画、よく間違えられる『狂熱の果て』は、翌年の新東宝映画で、原作者は同じ河野典正である。こちらの監督は、蔵原惟繕で、撮影は間宮義雄である。音楽は、黛敏郎で、全面的にジャズが使われていて、非常に良い。後に、日活の『非行少年・陽の出の叫び』の予告編でも黛の音楽が使用されていた。         
渋谷のジャズ喫茶・デュエットにたむろする川地民夫は、恋人の千代郁子に外人相手の売春をやらせているが、ある日、千代に外人と絡んでいる隙に財布を抜き、刑事に逮捕される。刑事に密告していたのは、長門裕之だと知って、ずっと恨みに思う。鑑別所から出た川地とダチの郷英次は元も木造アパートに戻るが、そこは渋谷と恵比寿の間で、絶えず電車の疾走で揺れるボロアパート。銀座で外車を盗んだ二人は海に行く。当然、江ノ島で、ここには日活の堀社長が作った水族館があるので、日活で海と言えば江ノ島である。私の知る限り、公有地に民間の建物が建っているのは、ここと日比谷の松本楼だけであり、松本楼は、明治時代以来の経緯だが、この江ノ島水族館は堀久作の政治力の結果である。その海岸で、川地は、長門と恋人の松本典子を見つけ、彼女を強姦する。これが、海水パンツをはいたままなので、非常に不自然。当時の性的描写はこんな程度だったのだ。松本は、妊娠したとして、川地をデュエツㇳで毎日待ち伏せる。ここは、道玄坂から東急本店の方に抜ける道にあった店で、ここは火事になって改装され、私が通っていたころは、3階建ての大きな店だった。掛るLPが、店内のリフトで上に登っていく仕掛けがあり、有名な店だった。内部は、撮影所のセットだろうが、たぶんもとによく似せていると思う。松本は、画家で、彼女の仲間のスノッブも出てくるが、現在見ると滑稽なだけである。川地は、「あいつも汚さなければならない」として、千代に長門を誘惑させて、旅館で性交させる。この辺の論理がよくわからない。最後、郷英治は、関東組(安藤組だろう)に入るが、喧嘩でケガして死んでしまう。最後、川地は千代を連れて産婦人科に行くと、長門と松本の二人もいる。彼らも堕胎手術に来たのだ。その時、川地は松本を自分に引っ張り、千代を長門に押し付けて、「これでいいんだ・・・」と言う。私としては贔屓の蔵原だが、あまり肯定できない作品である。全体に狂熱と言うよりも、主人公の狂騒的な振舞いが非常におかしい作品である。黒人としてチコ・ローランドが出ているが、この時期の日活や東映によく出ていた。普段はなにをしてていたのだろうかと思う。まだ、渋谷川の上に蓋は一切ない時代である。


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