藤山寛美と渋谷天外の松竹新喜劇作品の映画化で、寛美の当たり役の「あほう」役である。
ただ、これは今では作れない喜劇だなと思う。
寛美は、医療機器メーカー社長の天外の息子だが、あほうで、今日の言葉で言えば中程度の知的障害者である。
読売テレビで大ヒットし、ひところ声帯模写でも、寛美のあほうぶりを真似する人がいたが、今はいない。
これが、知的障碍者への差別につながるからだろう。
もちろん、寛美には芸があるので、それ自体が批評性を持っているが、それを抜いてやられると、ただの差別になってしまうのだ。
冒頭に天外の邸宅が出てくるが、その地下で寛美はロケットを研究していて、発射したロケットが1階の床を破って出てくる。
ここにも、スプートニクショックの影響があったのかと思う。
ソ連の人工衛星打ち上げ成功の「スプートニクショック」の影響は大変なもので、都立日比谷高校の生徒でもみな東大の理工学部を目指したそうだ。新東宝の喜劇『私は嘘を申しません』でも、主役がロケットを研究していたほどだ。
要は、寛美は玩具にしか興味がなく、九条映子らの女性と海に行くが、逆に女性恐怖症になってしまう。
そこで、天外は、自分の秘書の環三千世に寛美を誘惑させると、本当に環を好きになり、本当は環は、同じ秘書の北上弥太郎と恋仲だったという挿話がある。ここで、環は宝塚映画になっていた。彼女は、小津の遺作『秋刀魚の味』で、北竜二の若い後妻として出てきて、日本映画史に名を残している女優である。
寛美は、天外の代理で、医者の伴淳三郎の病院の披露宴に行き、つい伴淳を「手遅れの」といつも天外が言っている台詞を言ったことから、天外が、先代社長が急死したとき、未亡人から会社を乗っ取った「悪人」だと言われる。
そうした悪業のために、寛美の頭もおかしくなったとまで言われる。
これはひどい表現で、現在では放送禁止である。
昔、寛美の松竹新喜劇が毎年夏に新橋演舞場に来ることがあり、よく見に行ったが、こうした古さに参ったものだ。
寛美を結婚させるため、見合が行われ、その相手の母親から、問題の未亡人が健在で、東京にいるが、今日は白馬に登山していることがわかる。
寛美はすぐに白馬に行き、北上も後を追う。
だが、白馬を豪雨が襲い、寛美は山小屋に逃げ込むが、そこには母と娘もひげ込んで来ると、それは豪雨で崩れて崖下に落ちてしまう。
ここは、城戸四郎の好きなチャップリンの『黄金狂時代』みたいだが。
北上が、寛美のいた山小屋が崩壊したことから、寛美は死んだことになり、葬式が行われている。
伴淳が弔辞を読んでいると、寛美が姿を現す。
そして、未亡人三宅邦子と娘の北条きく子も出てくる。
天外は、三宅らに謝罪し、会社に迎えることを約してエンドマーク。北条きく子は、一時期霊感女優として有名になった方である。
衛星劇場
ただ、これは今では作れない喜劇だなと思う。
寛美は、医療機器メーカー社長の天外の息子だが、あほうで、今日の言葉で言えば中程度の知的障害者である。
読売テレビで大ヒットし、ひところ声帯模写でも、寛美のあほうぶりを真似する人がいたが、今はいない。
これが、知的障碍者への差別につながるからだろう。
もちろん、寛美には芸があるので、それ自体が批評性を持っているが、それを抜いてやられると、ただの差別になってしまうのだ。
冒頭に天外の邸宅が出てくるが、その地下で寛美はロケットを研究していて、発射したロケットが1階の床を破って出てくる。
ここにも、スプートニクショックの影響があったのかと思う。
ソ連の人工衛星打ち上げ成功の「スプートニクショック」の影響は大変なもので、都立日比谷高校の生徒でもみな東大の理工学部を目指したそうだ。新東宝の喜劇『私は嘘を申しません』でも、主役がロケットを研究していたほどだ。
要は、寛美は玩具にしか興味がなく、九条映子らの女性と海に行くが、逆に女性恐怖症になってしまう。
そこで、天外は、自分の秘書の環三千世に寛美を誘惑させると、本当に環を好きになり、本当は環は、同じ秘書の北上弥太郎と恋仲だったという挿話がある。ここで、環は宝塚映画になっていた。彼女は、小津の遺作『秋刀魚の味』で、北竜二の若い後妻として出てきて、日本映画史に名を残している女優である。
寛美は、天外の代理で、医者の伴淳三郎の病院の披露宴に行き、つい伴淳を「手遅れの」といつも天外が言っている台詞を言ったことから、天外が、先代社長が急死したとき、未亡人から会社を乗っ取った「悪人」だと言われる。
そうした悪業のために、寛美の頭もおかしくなったとまで言われる。
これはひどい表現で、現在では放送禁止である。
昔、寛美の松竹新喜劇が毎年夏に新橋演舞場に来ることがあり、よく見に行ったが、こうした古さに参ったものだ。
寛美を結婚させるため、見合が行われ、その相手の母親から、問題の未亡人が健在で、東京にいるが、今日は白馬に登山していることがわかる。
寛美はすぐに白馬に行き、北上も後を追う。
だが、白馬を豪雨が襲い、寛美は山小屋に逃げ込むが、そこには母と娘もひげ込んで来ると、それは豪雨で崩れて崖下に落ちてしまう。
ここは、城戸四郎の好きなチャップリンの『黄金狂時代』みたいだが。
北上が、寛美のいた山小屋が崩壊したことから、寛美は死んだことになり、葬式が行われている。
伴淳が弔辞を読んでいると、寛美が姿を現す。
そして、未亡人三宅邦子と娘の北条きく子も出てくる。
天外は、三宅らに謝罪し、会社に迎えることを約してエンドマーク。北条きく子は、一時期霊感女優として有名になった方である。
衛星劇場