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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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日本は、なぜソ連の参戦を予想できなかったのか

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太平洋戦争で、悲劇の一つは、1945年8月のソ連の日本への参戦だろう。
ソ連が、対日戦争に参戦することは、4月のヤルタ会談で決まっていて、理由は太平洋でのアメリカ軍の消耗を減らすためだった。
その条件として、戦後はソ連には千島と樺太を与えることを約束していた。
日本も、ソ連の参戦のおそれは抱いていたようだが、あまり現実感はなかったようだ。
その理由は、日本がソ連のスパイ網を殲滅させていたことがあると思う。




ソ連のスパイとは、言うまでもなくリヒヤルト・ゾルゲらのゾルゲ・スパイ団である。
優秀なスパイとは、常に二重スパイであり、ゾルゲはソ連赤軍のスパイで、日本の近衛内閣の極秘情報をソ連に伝えていたが、同時にソ連の情報を日本側に与えていたはずだ。そのことは、たしか佐藤優の本にも書いてあったと思う。
敵から情報を取るためには、味方の情報を敵に与えることが必要で、それが優秀なスパイである。
だが、日本の特高は、1942年にゾルゲらを逮捕し、ソ連のスパイ団を殲滅してしまう。
近衛内閣の中枢にまでソ連のスパイが手を伸ばしていたことは、大変に衝撃的で、映画界でも「防諜映画」がいくつか作られている
ほどだ。
しかし、このゾルゲ・スパイ団の殲滅は、政治的に考えれば大きな間違えだったと思う。
彼らを何らかの形で生延びさせておけば、ソ連の動向は的確に把握されて、いずれ満州国や千島、樺太に攻めてくる最新の情報が取れただろうと思う。
その意味では、日本政府と日本軍は、いかに情報を軽視していたかを示すものである。
なにしろ、敗戦間際には、近衛文麿を特使としてモスクワに派遣し、ソ連に「停戦の仲介」を頼もうと思っていたのだからひどいというほかはない。

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