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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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黒木和雄3本

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国立映画アーカイブの「戦後ドキュメンタリー映画特集」 黒木和雄の『炎』『恋の羊が海いっぱい』『わが愛北海道』の3本.
『炎』には、映画『海壁』の第二部で、ルポルタージュのサブタイトルがついている。
ルポルタージュも、以前はよく使われた表現で、カメラルポルタージュというのも使われ、早稲田にもカメラルポルタージュ研究会というのもあった。
『海壁』は、横須賀の東電火力発電所の基礎工事を描いたものらしく、この二部では中心施設のボイラー、発電タービン、変電施設等の建設過程が記録されている。
冒頭に、炎の中で踊る男女の姿があり、諸所にも挿入される。
要は、炎が電気を作ると言うことなのだろう。
巨大なボイラーと内部の無数のパイプ、そこに海水を純水にしてパイプに流す。一方、海から石炭と石油を上げて、石炭は粉砕して粉にし重油と混ぜて500度に燃焼させる。できた蒸気でタービンを高速回転させて発電し、変電して高圧送電線で東京に送る。
解説は長門裕之、音楽は松村禎三で、大掛かりな楽団の演奏である。
シネスコ・カラーで、映倫マークも付いているので、一般館でも上映されたようだ。

次の『恋の羊が海いっぱい』になると黒木の才能が爆発する。これはペギー葉山を主人公にしたミュージカルなのだ。
ペギーが歌う東京の街角から、お針子の部屋、さらに緑の牧場へと忙しく転換するが、到底記録映画には見えない。
音楽は、小野崎孝介、詩は谷川俊太郎。
お針子で当時の若手女優が多数出てくるが、久里千春、五月女マリ、水垣洋子、そして言うまでもなく後に真理明美になる及川久美子。
牧場で出てくる鰐淵晴子のような女優は誰かと思うと、岡乃桃子で、松竹の女優だったらしい。




最後の『わが愛北海道』は、まことに凄い作品で、北海道へのラブレターというか、アジテーションのような詩である。
ナレーションの原稿は劇作家清水邦夫、音楽はいつもの松村禎三で、これも非常にパセテックというか華麗なピアノ曲。
冒頭に小樽のニシン小屋のことが出て、すぐに札幌の主人公関口正幸になるのが唐突だが、本当は関口と及川久美子との全裸のシーンがあったが、北電の重役が激怒してカットされたとのこと。
コンサルの関口が、北海道の産業、農業、漁業、石炭、発電、港湾開発、製材等の将来の発展をまさにラブレターのように歌いあげる作品である。
及川は、小樽の靴工場の女工で、諸所に出てきて、関口と結婚し、ハッピーエンドに向かう。
ここで賛美された北海道の産業のほとんどが現在ではみな駄目になったが、中では長崎から移住してきた若者のパイロットファームが、その後どうなったのかが一番気になるところである。
及川久美子は、前の『恋の羊が海いっぱい』など、いろいろな作品に出ていたのだが、映画『モンローのような女』のオーディションで選ばれて真理明美として主演し、松竹の作品に出た。
しかし、真理は、モンローのような肉体的な女優ではなく、ヘップバーンのような感じだったので、大成しなかった。
ただ、その後映画監督須川栄三と結婚し、彼のフリーになってからの映画製作に大変に貢献したようだが、2017年に亡くなられた。



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