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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『日蓮』

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八幡さんには悪いが、2019年の映画を『ハード・デイズ・ナイト』で終わるわけにいかないので、録画してある1979年の『日蓮』を見る。
製作の永田雅一は、大映時代にも1958年に『日蓮と蒙古大襲来』をカラー・ワイドで作っていて、なかなか良い映画だったが、この方が日蓮の実像に近いようだ。
監督は、松竹の大ベテラン中村登なので、構成も画面、音楽も非常によく感動した。

        

『日蓮と蒙古大襲来』の主演は長谷川一夫なので、美しいがややきれいごと的だが、ここでは中村錦之助なので、まじめで戦闘的な日蓮の姿がよく出ている。
日蓮は、日本の宗教の中では、非常に特異で、他宗を否定・非難し、自分たちだけが正しく、法華経を信じないと、
「人も国もだめになり、地獄に落ちる!」と叫ぶ。
仏教の経典の中で、唯一法華経のみが正しく、他の教えを基にする禅宗、浄土宗、浄土真宗などの既成の宗教は駄目というので、他宗からの迫害はもとより鎌倉幕府からも敵視され、弾圧される。
こうした日蓮宗の持つ戦闘性故か、日本の近代の右翼はほとんどが日蓮宗信者である。

話は、32歳で比叡山での修行から戻った蓮長が、故郷の清澄山で7日間の行を行った末に、昇る朝の陽の光を浴びて、日蓮と名乗り、「法華経を広め、日本の柱とならん」と決意したところから始まる。
鎌倉の庵に居し、町で辻説法する。他宗教の批判だが、重要なのは現世の幸福で、浄土宗のように来世で幸福を得ても意味がないということだ。
疫病、貧乏、自然災害に苦しむ下層の庶民に次第に信者を増やし、幕府も問題視するようになる。
執権時頼は市川染五郎(現、白鷗)で、禅宗信者だが、中立に立とうとするが、幕府の上級の御家人の中谷一郎は敵視して様々な弾圧を加えてくる。
だが、日蓮は言う、「日蓮は死んでも、法華経は死にません」
「板垣死すとも、自由は死せず」みたいな台詞だが、錦之助が言うとリアリティがある。
日蓮は、まず伊豆に流され、さらに佐渡へんと遠島になる。そこでは、元禅宗信者で天皇の従者だったという西村晃に襲われるが、逆に日蓮に信者にされてしまう。
この辺の日蓮宗の説得力は、現在の創価学会の「折伏」にもつながっていると思える。
鎌倉竜の口での、日蓮首切りの時に落雷し、首切り役人の刀が折れてしまうのも出てくる。
日蓮は、蒙古の二度の襲来を予言したとのことで、さらに信者を増やすが、幕府方の弾圧も強くなる。
鎌倉での迫害を逃れて日蓮は弟子たちと身延に行く。
そこの寒さから逃れるため常陸の湯に行こうとするがたどり着けず、武蔵野国の池上に逗留し、宗仲家に止まり、そこで死ぬ、61歳。

池上での言い伝えは違い、日蓮は本門寺大坊で死んだとのことで、その柱もあるが、本当はこの映画のように、池上宗仲の家で死に、そこに本門寺ができたのだそうだ。
一方、私の池上小学校の同学年に宗仲君というのが二人いて、一人は経師屋で、もう一人は仕事師の、息子で、それぞれは従兄弟とのことだった。
日本映画専門チャンネル

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