Quantcast
Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

『薄桜記』

$
0
0
言わずと知れた名作で、今回は4Kにされてのデジタル版での上映。
これは忠臣蔵の外伝で、堀部安兵衛(勝新太郎)と丹下典膳(市川雷蔵)、さらに勝が惚れるが、雷蔵と結婚してしまう千春(真城千歳)との不思議な関係を描く。
原作は五味康祐だが、伊藤大輔の脚本が実に素晴らしく、勝と雷蔵の友情、青春のあやうさが描かれている点で、やはり伊藤大輔は永遠に若い。



話は、吉良上野介の屋敷に向かう勝が、雷蔵と初めて会ったところの回想から始まる。
中山安兵衛は、叔父の決闘の助太刀に行くための途中に馬に乗った雷蔵に会い、雷蔵は、勝の襷が不安で高田馬場に行く。
村上一門との決闘で、雷蔵は道場が同じなので、かかわりになるとまずいとしてすぐに立ち去るが、見とどけた一味の伊沢一郎らによって、
「助太刀しなかったこと」を批難され、道場を破門になる。
大阪への勤めの最中に、妻の真城は、伊沢、伊達三郎らによって拉致されてしまう。
1年後、大阪からの勤めに雷蔵が戻ると、真城はいず、安兵衛と不義密通をしたとの噂を立てられえいるが、これは勝と雷蔵を対立させる伊沢たちの仕業。
真城を実家に戻した雷蔵は、一切の事情を言わず、すると激怒した真城の兄北原義郎に右腕を切られる。

侍を辞め、街頭での「五文叩き」で身を立て、一味が見つけるのを雷蔵は待っていると、吉良邸に屯していた連中は雷蔵のところに来て、彼らと雷蔵一人の凄惨な斬りあいが行われる。
左手だけで、足に銃弾を受けている雷蔵は、見事全員を殺し、勝新太郎は、47士の一人として吉良邸に飛び込んでゆくのだった。

森一生のむだのないドラマの運び、画面がすごいが、なによりも凄いのは、こうした名作が、普通の娯楽作品として作られていた、大映京都のスタッフ、キャストのレベルの高さである。
その前に見た、田中徳三監督の、雷蔵、北原義郎、島田竜三の『お嬢吉三』は気分だけの映画と言えばそれまでだが、新春にふさわしい楽しい映画だった。
横浜シネマリン

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3529

Trending Articles