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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『女殺し屋・牝犬』

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江波杏子が、女賭博師ではなく、女の殺し屋に扮した作品。意外にも上映はなく、今回初めて見た。
大映で、殺し屋といえば、森一生監督、市川雷蔵主演の『ある殺し屋』と『ある殺し屋の鍵』で、この江波版は、『ある殺し屋の鍵』によく似ている。
脚本は、小滝光郎、監督は井上芳夫、音楽も鏑木創とおなじみ。

小料理屋の女主人の江波は、裏の世界では有名な殺し屋である。
指輪に仕組んだ針で一突きというのも、雷蔵のとよく似ている。

政財回の黒幕が三島雅夫で、彼の悪事を元の仲間の石山健二郎が「メモ」を出して政界の裏をばらすと脅している。
三島は、東洋商事社長の高橋昌也に、石山殺しを依頼し、高橋はやくざの南原宏冶に命じ、さらに南原は手下から、江波に話をつける。
その間で、3千万円がピンハネされて、最後江波のところに来るときは、1千万円になっているのがおかしい。
江波は、モデルの赤座美代子と友達だが、赤座は実は、高橋の世話になっている。



箱根のホテルに籠って「メモ」を石山は弁護士に作らせているが、弁護士は劇団俳優小劇場の代表だった早野寿郎で、彼の映像は珍しい。
石山が、プールに行くとき、江波は潜水して下から石山を殺すが、これも『ある殺し屋の鍵』で、雷蔵が内田朝雄を殺すのと同じである。
ここで、江波のビキニ姿が拝める幸福。
ホテルから逃げる時、江波の車は急にブレーキが利かなくなり、道を飛び出して炎上するのも同じ。
しかし、江波は寸前に外に出ていて無事で、今度は南原らを脅し、指示したのは高橋であることを知り、彼と赤座のマンションに忍び込んで高橋を脅して、一番の悪が三島であることを突き止め、高橋を殺す。
最後、欧州に逃亡する三島を電話ボックス内で、江波は刺殺してエンド。

出来は悪くないのに、「女賭博師」ほどヒットしなかったのはなぜか。
それは、西欧的な江波が、和服で花札をするという矛盾が「女賭博師」にはあったせいで、ここにはそうした倒錯性がないからだと思う。
日本映画専門チャンネル

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