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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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たった77分だった 『浪花悲歌』

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先週のトークイベントの素材として、溝口健二監督の『浪花悲歌』を見直した。
戦前の大阪で繰り広げられる恋愛悲劇であり、山田五十鈴の演技が凄く、この時彼女は19歳だったが、すでに嵯峨美智子を生んでいたのだ。
また、当時の大阪は、モダン都市で、豪華なアパート、地下鉄、そごうデパートなど、東京を越えるモダニズムがあったことがよくわかる。
そうした近代都市で起きたのが、男を手玉に取って生き抜こうとして失敗する女が山田五十鈴なのである。
彼女の恋人は、加賀邦夫で、典型的な二枚目で、なにもできない色男であるのが興味深い。ちなみに彼は、女優松原千明の父親である。
この作品は、溝口と依田義賢のものだが、ヒントになっているのは、文楽だと思う。

さて、さらに凄いと思うのは、この名作は、たった77分しかないことで、まったく余計な描写がない。
映画は、長さではないことの証である。


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