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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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「こんにゃく相場」

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こんにやくに相場があると聞いたのは、当時農協中央会に勤める義兄(二番目の姉の夫)からだった。
義兄は、北海道羊蹄山の近くの小さな村の生まれで、優秀だったのだろう、その村で最初に大学に入った人だったそうだ。
北大農学部時代は、学生運動もやっていて、そのために北海道では就職できず、東京の農協中央会に入った。

非常にまじめな方だったが、大変に酒に強く、正月などで会うと、我々とは一桁違う酒量だった。
農協では、コメを担当していて、農協の中心にいたわけで、最後は固有職員としては最高の地位までにいき、定年後は全国厚生連の事務局にいた。
厚生連というのは、農協の病院で、赤十字や済生会と並び、全国に多くの病院を持っている組織である。



彼に正月の時に教えてもらったのが、「こんやく相場」の存在だった。
こんにゃくは、多年草なので、毎年の価格が強く上下するのだそうだ。
ある時、値段が上がると、「それっ・・・」とみな作るが、すぐにはできず、数年後には作り過ぎで値が下がるといったことになる。
つまり、価格の予測が非常につけにくい作物だそうで、だから相場があるとのこと。

今も、横浜にはこんやく屋があり、今時と思うだろうが、たいていは相場もやっているはずで、結構儲かっているようだ。
今はないが、横浜にはかつて『浜っ子』というタウン誌があった。その編集長の渡辺さんに聞いたところでは、二代目のオーナーは、磯子のこんやく屋さんで、金持ちだったとのこと。

さて、義兄だが、定年退職し、全国厚生連に行った翌年だったと思うが、非常に寒かった正月明けの朝、通勤途上、駅の近くで倒れてすぐに亡くなってしまった。
心筋梗塞でいきなり倒れたので、体は大きなままだったので、葬式の最後、胸が厚く棺桶に入れるのに葬儀屋さんが苦労していたことを憶えている。

天国では、現在の日本の「コメ離れの時代」をどのように見ているのだろうかと思う。


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