昔の映画を見て、一番違和感を持つのは、精神病者と病院を描いたところだ。
それは、戦後も同じで黒澤明の『生きものの記録』の最後の三船敏郎が入院されている病院もそうだ。
と言って、私は、精神病院に行った経験はないが。
この日本映画史上で有名な作品が弁士付きで上映されるというので、日本近代文学館に行く。
駒場東大前は高校時代から何度も来たことがあるが、西口から出たのは初めてで、そこからかなり長い距離を歩いて駒場公園に付く。道の左右は豪邸ばかり、風が強くて歩くのが大変だった。
弁士は片岡一郎、ピアノは上屋安由美。
筋は、外国船員だった男は、家庭を顧みず、絶望した妻は自殺して狂喜に至り病院に入院したとのことだが、それは描かれず、部屋で一人踊り狂う女南栄子から始まる。
男の井上正夫は、身分を隠して病院の小使になっていて、彼の目で病院内が描かれるが、セットと撮影は非常に前衛的である。撮影は杉山公平で、助手は円谷英二。
男の娘が結婚することになるが、相手に母親のことがばれて破談となるが、井上は言う、そんな奴とは結婚しなくてよい。
ついに男は、妻を連れて病院を逃げようとするが、妻は出ることを躊躇し出られない。だが、それは夢だった。
また、くじ引きで一等が当たり、男が箪笥を背負って家に戻るシーンもあり、これも夢かと思うがそうではない。ただ、これを見て、小津安二郎の原作で内田吐夢が監督した名作『限りなき前進』の、主人公のサラリーマンの夢は、この辺から想起されたのかと思った。
最後は、やはり昔と同じように病院で男は働き、妻は病院で入院している。
患者の一人で、高瀬実がいて、すぐに分かった。
日本近代文学館