今日、3月3日は、桃の節句、おひな祭りだが、同時に井伊直弼が襲われて殺された「桜田門外の変」が起きた日でもある。
ただ、旧暦なので、現在の暦に直せば3月24日と随分と後になるが、安政7年、1860年のこの日は寒く雪が降っていて、それも襲撃側が襲撃に成功した一因でもあった。
ひな祭りの日は、大名の江戸城への総登城の日だったので、「井伊直弼は必ず来る」と待ち伏せしていた水戸浪士たちなどの一味に襲われたのである。
これは、大老という、今でいえば総理と最高裁判所長官と衆参両院議長、司法、行政、立法のすべての権力を備えた大権力者が、不逞の浪人たちに襲われ殺された大事件で、これで一段と幕府の権威は大きく失墜したのである。
これをもとに作られた小説に郡司次郎正の『サムライ・ニッポン』があり、サイレント時代から何本も製作されているが、私は岡本喜八監督の『侍』が一番良いと思っている。
脚本が去年亡くなられた橋本忍、音楽佐藤勝、主演が三船敏郎、井伊直弼に松本幸四郎、三船の同輩で、伊藤雄之助の指令で殺しあわなくてはならなくなるのが小林桂樹、その妻が八千草薫、三船の本当の母が杉村春子というベストの配役だった。
その他、新珠三千代が二役で、田村奈己が桜田門外の茶屋の娘で出ていた。
この1965年ごろは、なんども書いているように日本映画の全盛期で、新劇等も併せてつくづくいい役者がいたなと思うのだ。
岡本喜八も、東宝の時代劇まで撮るエースだったのに、この後1960年代末には、東宝は彼らのような優秀な監督を切ることになるのだから、時代の推移は恐ろしい。