森下にある渡辺信夫さんの私設図書館「眺花亭」での映画会は、『事件記者』2本。『仮面の脅迫』と『真昼の恐怖』。
どちらも、今から見ればサスペンスとしての謎解きは単純すぎるが、映画は面白い。
なによりも、警視庁記者クラブの連中の動静が面白い。中心は、NHKテレビと同じく「東京日報」の永井智雄、滝田祐介、園井啓介、原保美らが活躍し特ダネを取る。そこに新人として沢本忠雄が入って起こす喜劇的筋もある。
なぜかいつもいる「ご老体」とよばれている大森義夫は、いったいどういう身分なのか議論になる。
一番の喜劇的役割は、「中央日々」の高城淳一と新人の山田吾一のやり取りが最高で、大いに笑えた。
そして、仕事の夜は、いつもの小料理屋ひさごで、おちかさんと酒を飲む。このルーティンは、後の刑事ものでもいつも使われたシーンである。テレビでは元松竹の坪内美詠子だったが、ここでは相馬千恵子。
何よりは、1950年代末の東京の情景が出てくることで、また江の島海岸も良く出てくるが、これは江の島水族館が日活の堀久作がやっていたためである。今の新江の島水族館も、堀の息子堀雅彦氏と結婚した女性が社長になっているのは、そのためなのだ。
因みに事件記者という言葉はなく、作者島田一男の造語で、本来は社会部記者である。
山崎徳次郎監督は、各種のベストテンに入るような作品は1本もないが、安定していて面白い娯楽作品が多い。
なかでは赤木圭一郎の『霧笛が俺を呼んでいる』がベストだと思う。