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Channel: 指田文夫の「さすらい日乗」
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『影の爪』

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夜に予定があるので、その前に時間つぶしに見た映画。見たと思い込んでいたのは、やはり岩下志麻主演の『影の車』で、これは見ていなかったが、非常に面白かった。

           

香山美子と井上孝雄夫妻が、雨の日に車の運転を誤り、男を引いてしまう。

その家に行くと、妻の岩下は非常に丁重で、「夫は酒を飲んでいて落ち度がある」と言い、夫妻は安堵する。

だが、製薬会社の社宅にいたので、すぐに出ることになり、井上の豪邸の離れに一時住むことになる。岩下には、リウマチで車椅子の母親の鈴木光江がいて、この鈴木も大変に不気味。鈴木は、劇団文化座の主催者佐々木隆の妻であり、女優佐々木愛の母親である。

ここから、岩下と香山の戦いになり、一見上品な岩下は、夫婦の見ていないところでは、平気でタバコを吸うなどひどい態度。

会社の元同僚の桑山正一に話を香山が聞くと、岩下の言っている話はほとんど嘘であることが分かる。

この桑山と女房の石井富子とのやり取りも面白い。

香山のところに、遊び人の学生松橋登が現れ、岩下は松橋の車を使って事故を起こしていたことを言う。

そして、いつの間にか、岩下は井上を誘惑して二人は関係を持ってしまう。

そして、松橋を香山は家に呼んで、岩下の車の事故と、自分たちの交通事故との関係を証言させようとするが、松橋はいきなり香山を襲う。

もちろん、松橋を跳ね除け、いったんは部屋を出た松橋は、香山が気を許した隙に再度部屋に入って香山を襲い、二人はくんずほぐれつの争いになり、香山は松橋を鋏で刺し殺してしまう。遺体と部屋の床に飛び散る血の赤い色。

すると香山は、エアーブラシで、壁の赤色を消そうとする。

その夜、会社から戻った井上が岩下と共に、香山の部屋に入ると、全部が白色に塗られている。松橋の遺体も真っ白になっていて、香山自身も白くなっている。

精神病院に香山は入院し、医師の内藤武敏は「長い目で見るしかありませんな・・・」と。

幸せそうに車で家の二人で戻る井上と岩下。そこにオートバイが飛び出してきて、外壁に衝突して死ぬ二人。

最後は、井上の豪邸を一人で車いすで動く鈴木光枝。

まあ、やはり松竹も勧善懲悪にしないとエンドマークを出せなかったのだ。

監督は貞永方久、原作はシャーロット・アームストロングで、大野靖子、桂千穂、白坂与志夫が脚本にしている。

元は、桂千穂が書き、東宝でやる予定が進まず、それで大野靖子を入れて直し、さらに白坂が松竹に持っていき岩下が気に入って映画化されたとのこと。

貞永は、非常に力のある監督で、結構良い作品を撮っていたが、松竹の凋落で次第に落ちていった。

シネマヴェーラ渋谷

 


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