1952年の新東宝作品、ただしこれは東宝で配給されている。この頃は、製作は新東宝、配給は東宝という分担をしていた時期の最後の作品だろう。その後、新東宝は独立して東宝と完全に手を切り、後には大蔵貢時代になる。
話は、東京城南地区のクリーニング屋の一家、父親は抑留されていて、弟弟子の加東大介が、母の田中絹代と店をやっていて、長女香川京子の目で物語が進行する。
父の三島雅夫もやっと戻ってくるが、すぐに死んでしまう。長男の片山明彦が結核で病院に入院していて、抜け出して家にいたがすぐに死んでしまうので、みな結核と栄養不良なのだと思う。
脚本は水木洋子、監督は成瀬巳喜男なので実に淡々と進む。
この企画は、川崎が出てくる映画特集だが、実際は蒲田など城南地区で撮影されていると思う。成瀬は、松竹蒲田にいたので、この辺の土地勘はあるのだ。
香川京子の下の次女は、榎並啓子で、この頃は有名な子役だったらしいが、大人になって辞めたようだ。
これの次に溝口健二の『山椒太夫』で、津川雅彦の厨子王の妹・安寿を演じてて、大人になると香川京子と花柳喜章になる。これは、この『おかあさん』で共演した田中絹代の推薦によるものかもしれない。
溝口健二に「安寿役に良い子役がいますよ」との。
最後、榎並は、子供のいない三島雅夫の弟の家に貰われていき、お別れの記念に向ヶ丘遊園地に家族全員で行く。
ここは立派に川崎市だった。
何人もの人が死に、姉妹が分かれる話だが、少しも悲しくもなく、非常に感動的でもちろん泣いた。
川崎市民ミュージアム