『赤いランプの終列車』『非常な銃弾』は、共に1950年代末の日活作品で、要は添え物の中編である。
『赤いランプの終列車』は、春日八郎の大ヒット曲をもとにした歌謡映画で、春日は、田舎の鉄道の車掌で、歌がうまいので、上京して歌手になる。
実にいい加減な話だが、脚本は後に作詞家になる関沢新一、監督は小杉勇である。
小杉は言うまでもなく、戦前からの名優だが監督になりたくて、日活でなれたので嬉しくて仕方がなく、現場は楽しくてスタッフには非常に人気があったとスクリプター白鳥あかねの本に書いてある。
また、彼は民謡研究の大家で、これはキングレコードとの協力なので、民謡歌手の斎藤京子、当時はまだそれほど人気でもなかった三橋美智也が出てくるのもそのせいだろう。
他に、若原一郎、大津美子、平尾正晃らのキングの歌手が出てくるのは分かるが、なぜか金田正一が出てくるのは、春日と友人だったのか。
春日八郎の演技は結構きちんとしていて、調べると彼は戦後新宿のムーランルージュにいたとのことである。
『非常な銃弾』は、殺し屋の小高雄二の話だが、途中でかつて小高と友人だった、長弘が絡んでくる。長は、元は片岡千恵蔵の弟子だったそうだが、日活に移籍し、ロマンポルノ時代にも出ていた男優である。
彼は、実は刑事で、天草四郎が親分のヤクザ組織に潜入して捜査している。
元友人が犯人と刑事に別れていう話は多くあるが、あまりうまくできているとは言えない。
娯楽映画の名人野口博志としては、平均以下の作品だろう。
阿佐ヶ谷ラピュタ